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『源氏物語』アンソニー・ロス・コスタンツォがMETライブビューイングに登場
8月4日(土)から始まるMETライブビューイング「東劇アンコール上映2018」で、歌舞伎座「七月大歌舞伎」出演のアンソニー・ロス・コスタンツォが登場する『ルイザ・ミラー』が上映されます。
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「七月大歌舞伎」夜の部『源氏物語』で、歌舞伎座初出演を果たしたアンソニーが、今度はMETライブビューイングで東劇に登場します。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(通称、MET=メト)のオペラを映画館で上映するMETライブビューイング。舞台裏の熱気を伝える幕間のインタビューがお楽しみの一つとなっていますが、今回の「東劇アンコール上映2018」で上映される『ルイザ・ミラー』で、そのホスト役を務めているのがアンソニー。
『ルイザ・ミラー』は今年4月に上演された舞台で、METライブビューイングの公開は5月、今回はアンコール上映として8月から10月に5回上映されます。
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――さまざまな分野の伝統文化が融合する『源氏物語』、3回目の出演はいかがでしたか。
伝統をより深く理解できるようになりましたし、実際、西洋と東洋の芸術様式を合体させることの意味がわかってきた気がします。能、歌舞伎、日本の音楽、俳優の皆様ほか、大きな触発を受けることにもなりました。METなどオペラハウスに戻ったときに、ここで吸収したいろいろなものを、今後のパフォーマンスに活かせるのではないかとも。文化の交流はスリリングです。
――西洋のオペラと日本の歌舞伎、相性はいいのでしょうか。共通点などはありますか。
感情の確たる部分、究極的な表現の仕方という点では同じだと思います。その表現のモードが違うというだけで。インテンシティ=強さは一緒です。歌舞伎俳優が声を出して行う表現は、オペラの濃密さに通じるものがあります。オペラは非常に大きな声を出すので喉を傷めないのかとよく聞かれるのですが、歌舞伎俳優にそのことを聞くと、喉は全然痛くならない、なぜなら腹でしっかり支えているからと。オペラと一緒だね、と話しました。
――コラボレーションを実感するようなエピソードがあれば教えてください。
初演でのことです。夕顔が亡くなってその衣が後に残るところで、私は「Flow, my tears」を歌うのがベストだと思っていました。でも海老蔵さんは、それよりも歌舞伎でやるように、彼女の衣を手に取って涙をぬぐい、花道へ、そこでは歌わないほうがいいと言いました。その提案が正解。そんなふうに、日本の伝統の一部になれたことは非常に光栄で、人生をかけて訓練されてきた方々の伝統に、西洋人として受け入れてもらえたことがとてもうれしかったです。
――カウンターテナーとはオペラのなかでも特異な位置にあると思いますが、どういう特徴があるのでしょう。
カウンターテナーとして私が中心としているレパートリーは、バロックとコンテンポラリー。共通点は純粋さです。人間の感情をひと皮ずつむくようにして露わにするのです。ですから、カウンターテナーは精神の世界、子どもの時代、人間の弱さを表現しやすい声といえます。声帯のぎりぎりのところで歌っている、言い換えれば綱渡りのようなものなので、綱渡り的な弱さが、感情表現にとても適しているのだと思います。
――まさに今回の『源氏物語』闇の精霊という役柄にぴったりです。実際に歌舞伎座で歌われていかがでしたか。
とても素晴らしい劇場です。お客様の顔も見えて、どんなに小さな声でも遠くの客席に届くように思いました。バックステージが非常に広いところなど、METに似ているところも多い一方で、日本独特の美意識が現れた劇場だとも思います。サイン会などでお客様と接する機会があり、オペラを聴いたことがない人が多いのには驚きましたが。
――METライブビューイングなら足も運びやすいですね。
私はオペラが大好きで、自分のこの情熱をスクリーンをご覧になっている方々に伝えたいと思っているのです。そういう形で皆様と関わり合えたらと。私はそのMETライブビューイングで幕間のご案内、ホスト役をしています。ぜひ、映画館でオペラを見てください。
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『ルイザ・ミラー』上映スケジュール
8月9日(木)・10日(金)18:30/9月6日(木)・7日(金)11:00/10月2日(火)10:30