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歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 7月5日(木)、歌舞伎座百三十年「七月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 海老蔵が花道のスッポンから登場して始まった昼の部の通し狂言『三國無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや) 出世太閤記』。海老蔵が「秀吉激動の約50日の物語」の背景を語り、場内を和ませて引っ込むと、今度は西遊記の世界が出現します。如意棒を自在に操り、アクロバティックな剣士たちと軽妙な立廻りを見せた海老蔵の孫悟空は、空を見晴らして千里をひとっ飛び、宙乗りで消えていきました。

 

 そんな夢を見た森蘭丸のところに信長の悲報が届きます。今こそ天下をと高らかに言い放つ獅童の明智光秀。その頃、秀吉の陣所では、行方知れずの夫を探す八重が、その夫、秀吉と再会を果たします。八重を同道してきた猿回しが実は光秀の家臣の左馬之助で、海老蔵の秀吉と獅童の左馬之助、二人が運命的な出会いを果たしました。 

 

 光秀側と秀吉側をさまざまな歌舞伎の趣向をとり入れながら描き、そして物語は、信長の四十九日の法要へと向かいます。

 

 大徳寺の御簾が上がり、秀吉の傍らには信長の孫、三法師。昭和28(1953)年10月歌舞伎座では九代目海老蔵(十一世團十郎)と夏雄(十二世團十郎)が見せた場面を、今回はそれぞれ孫が勤めます。信長の子、信雄と信孝を後継に推す右團次の柴田勝家を、「にっくき爺め、下がりおろう」とにらみつけた堀越勸玄の三法師。その堂々とした、威厳さえ感じさせる姿に客席も目を見張り、拍手を送りました。 

 

 三法師によって信長の臣下を押さえた秀吉が、最後に説き伏せたのが左馬之助です。ここで見せる本水の立廻りも含め、歌舞伎味たっぷりに仕上がった『三國無雙瓢箪久』は、これまでとはひと味もふた味も違う太閤記となりました。

 夜の部では、歌舞伎に日本の伝統芸能の能楽、華道と、同様に長い歴史を誇る西洋芸術のオペラが融合し、最新技術による映像が、新たな観劇体験を生む通し狂言『源氏物語』が上演されました。

 

 物語の始まりを告げる映像が、歌舞伎座の広い天井を覆うように広がり、美しい日本の四季の移り変わりを見せながら、一気に歌舞伎座を『源氏物語』の世界へといざないます。背景にはたなびく雲、花道にまで桜が描かれ、まさに絵巻物の世界に入り込んだような気分になりました。紗幕の向こうで桜を生ける様子さえ、一幅の絵を見ているかのようです。

 

 自分は父の桐壺帝により臣籍に降ろされて源氏の君と呼ばれ、父が弘徽殿女御に産ませた子が朱雀帝となり、亡き母の面影を重ねる藤壺女御と父の間の子が、春宮(とうぐう)に定められます。母を知らぬ寂しさに加え、父にも見放されたと感じ、心が闇へ闇へと向かう源氏の君。光の君と呼ばれていた幼き日の回想では、面をつけた能楽師が桐壺帝を演じ、勸玄の光の君が「父上、私をお守りくださらないのですか」と問いかけるさまを、海老蔵の光源氏が眺め、その心境を闇の精霊が歌うという、歌舞伎として斬新な演出を見せます。

 

 二幕目、須磨へと隠退するため春宮と別れる場面では、勸玄が勤める春宮の「私を一人にしないでください」のひと言に、自分を重ねると同時に父の気持ちを推し量ることができた光源氏。父十二世團十郎の光源氏とともに海老蔵が春宮で初お目見得した昭和58(1983)年5月歌舞伎座を思い起こさせるこの場では、受け継がれる父から子への思いを光の精霊が歌い上げます。

 

 光源氏の身を案じる桐壺帝が龍神たちに守護を願い、映像による波しぶきが場内を覆う中、歌舞伎の竹本と能の地謡の掛合、激しい能の四拍子に乗って、海老蔵の龍王が宙乗りで、そして能楽師の龍神、龍女が花道を渡って須磨へと向かいます。歌舞伎と能が見事に一体となり、見たこともない景色が立ち上がりました。

 

 自らも父となって父桐壺帝の思いを知り、闇の中に一筋を光を見出した光源氏。最後は都一の貴公子の帰洛を祝っての総踊りで、「人生は光と闇の織り成す絵巻物」、歌舞伎座の『源氏物語』も幕を閉じました。

歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

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 地下2階の木挽町広場はすっかり夏景色、涼を呼ぶしつらえになって、土産物も夏仕様に。ぜひ、観劇の前後にお立ち寄りください。出店舗は終演後は閉店しておりますので、お早めのご利用をおすすめします。

 

 歌舞伎座百三十年「七月大歌舞伎」は、7月29日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/07/06