勘三郎「宗吾霊堂」で成功祈願
6月、Bunkamuraシアターコクーンでは渋谷コクーン歌舞伎第十一弾『佐倉義民傳』が上演されます。
下総佐倉の領主の圧政に苦しんだ領民の為に、名主木内宗吾が命を懸けて将軍に訴え国と民を守るこの作品は、家族との別れ、決死の直訴などドラマティックな展開で観客の心を打つ感動作です。この歌舞伎の名作を今回初めてコクーン歌舞伎で上演する中村勘三郎と演出の串田和美が、千葉県成田市の「宗吾霊堂」で成功祈願を行い、舞台への思いを語りました。
中村勘三郎
平成14年の初演の際に植樹した松が、いまでは父(十七代目勘三郎)が植樹したものより大きくなっちゃっていて・・・当時の事を懐かしく思い出します。成功祈願では、宗吾様の誠実で真っ直ぐな気持ちを、非力ではありますがひたむきに勤めさせていただきます、とご本尊に申し上げて参りました。
宗吾様の役は難しいのですが、それ以上に発端の殿様は難しい、ですからこのお芝居は扇雀さん次第です(笑)。有名な"子別れの場"や"甚兵衛渡しの場"はもちろん、ちょっと言えませんがラストは凄く面白いものになります。「人間の感情があれば、井戸に落ちた子がいれば助けるだろ」というセリフがありますが、みなさんもそういう気持ちをお持ちだと思います。人情を大切に、宗吾様の深みを前回よりも出せれば良いなと思っています。
串田和美
今日この場所を訪れ、成功祈願をしていただきながら、芝居のイメージがどんどん膨らんできました。今までの作品と大きく違うのは、悪い人がただ悪いという単純なものではなく、決して人として悪くはなくても、様々な事情で結果的に悪くなってしまう・・・いつの時代も変わらない政治の難しさ、また、それを理解してしまう宗吾様の辛さ、そういう部分をより深く描いているところだと思います。ぜひお楽しみに。