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玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

 

 2023年10月20日(金)から全国の映画館で上映が始まる「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」に向けて、坂東玉三郎が思いを語りました。

時を超える日本の戯曲

 この秋、泉鏡花の生誕150年を記念し、鏡花原作、玉三郎主演によるシネマ歌舞伎『海神別荘』、『高野聖』、『天守物語』、そしてグランドシネマ『日本橋』の4作品を特集上映します。多くの鏡花作品に出演してきた玉三郎は、その魅力について、「あまりひと言で言いたくはないのですが、やはり幻想的なところでしょう」と述べます。「めくるめく非現実的な空間が渦巻いていて、人間の汚濁を嫌う人たちの姿が美しい文章で綴られているということも、魅力だと思います」。

 

玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

 

 さらに、「定義したいわけではありませんが、鏡花先生の戯曲は大団円がないのです。能楽的な構成ができていると考えるとわかりやすい。幽玄といいますか、観ているうちにすっと終わっていきます」と、鏡花作品特有の面白さを伝えます。そうした背景からか自分が初演した当時は『天守物語』が難解なものとされていたと振り返り、「難しい部分は観やすく伝えられるように考えなくてはいけない」と、舞台をつくる側の心がけにも言及しました。

 

 話の折に触れて、いくつかの作品のせりふを流れるように語り、「こんなにバランスの取れたせりふってなかなか出会えないと思います。音楽的にできていて、1回覚えると出てくるんです」と、微笑みを見せた玉三郎。「どの時代でも上演できる、人間の魂を描いている。時を超える日本の戯曲という感じがします」という言葉に、長く鏡花作品と向き合ってきた俳優の思いがにじみます。

 

細部に宿る思い出

 シネマ歌舞伎は、舞台の衣裳や道具を間近で観られるということも醍醐味の一つです。玉三郎は、『天守物語』で富姫がまとう墨絵の龍の打掛は、暗い場面で白い着物が目立つようにと発想したことなど、今回の上映作品の衣裳それぞれの背景に触れるなかで、『海神別荘』の美しい衣裳を制作した職人の方との交流を思い起こし、「そういう職人さんに会えたということも幸せでした」と、懐かしげに語りました。

 

玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

 『天守物語』坂東玉三郎

玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

 『海神別荘』坂東玉三郎

 

 『高野聖』と『日本橋』はカメラの制約もあり、上演中ではなく終演後に撮影を行ったそう。『高野聖』は、みどころでもある水浴びの場面をはじめ、遠方のカメラでは収めきれない部分を、舞台上にカメラを入れて撮影したこと、『日本橋』はカット数が多く編集の苦労があったことや、整音やせりふの調整などにも時間をかけたことなど、明かされるエピソードから、細部にまでこだわり抜いてつくられたことが伝わります。

 

玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

 『高野聖』坂東玉三郎

玉三郎が語る、シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」

 『日本橋』坂東玉三郎

 

 改めて、今回の特集上映について、「このような企画ができるかどうかなんてことを思わずに、そのときそのときにつくってきたものですが、こういう風に並べていただいて、とてもうれしく思っています」と、喜びを口にした玉三郎。泉鏡花作品の世界観を玉三郎が表現する、珠玉の4作品と一挙に出会えるこの機会に、ぜひお近くの映画館のスクリーンでゆっくりとお楽しみください。

 シネマ歌舞伎「坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品」のうち、『海神別荘』『高野聖』は10月20日(金)から11月2日(木)まで、『天守物語』『日本橋』は11月3日(金・祝)から11月16日(木)まで、東劇ほか全国の映画館で上映。チケットは各映画館でお求めいただけるほか、購入特典でポストカードがついてくる(※数量限定)お得なムビチケカードは11月15日(水)まで販売中です。

2023/10/13