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仁左衛門が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」

仁左衛門が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 

 2022年7月の大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 第三十回 七月大歌舞伎」に出演の片岡仁左衛門が、6月22日(水)に行われた取材会で、道頓堀の夏恒例の公演に臨む思いを語りました。

 「今年も大阪で七月大歌舞伎の幕が開けられ、大変うれしく思っております。“関西・歌舞伎を愛する会”の第30回となる公演で、(前身の)“関西で歌舞伎を育てる会”から合わせると42回を数えます。大阪で歌舞伎がなかなか開けられなかった時期に、澤村藤十郎さんが頑張ってくださって、夏の公演が毎年できるようになりました。最初は初めて歌舞伎をご覧になるお客様のために、解説が演目の一つとして入っていましたけれども、今では通常の公演と同じ形態で上演できるようになりました。積み重ねを改めて感じます」と、感慨深げに振り返りました。

 

 仁左衛門は、夜の部『堀川波の鼓』で鳥取藩士の小倉彦九郎を勤めます。平成6(1994)年に大阪・中座での「七月大歌舞伎」で初めて演じ、回数を重ねて練り上げてきた役で、今回が4度目となります。

 

 「初めて歌舞伎をご覧になる方でも、すんなりとストーリーに入っていただける作品です。現代にもあり得る事件で、妻の不倫は許せないことですけれども、彦九郎は愛する妻(お種)の過ちを咎めない。演じれば演じるほど、その気持ちが分かりますね。黙っている間の芝居が大事で、武士として妻を成敗しなければいけないという思いと、助けたい気持ちが、彦九郎のなかで格闘しています。お種を成敗する直前に、仏間へ伴い、“先祖への詫びの一言さし許す”と言うのですが、これは妻への最高の愛情表現だと思います」と役への共感をしみじみと語りました。愛する妻を討たなければならない彦九郎の苦悩や痛みが描かれている作品で、「お客様には、なんとなく彦九郎の気持ちになっていただければ」と、柔らかな笑みを浮かべました。

 

 今回の「七月大歌舞伎」に出演する予定だった五世坂東竹三郎が6月17日に逝去したことにも触れ、「希少な役者さんで、竹三郎さんや大谷ひと江(七世嵐徳三郎)さんがいらっしゃらなければ、私は役者を辞めていたかもしれません。関西で歌舞伎公演が少なかった頃、お二人が勉強芝居を行われ、頑張られている姿を見て、歌舞伎役者の家に生まれた自分が歌舞伎から逃げ出していいのかと、歯を食いしばって止まりました。竹三郎さんがプロデュースされた公演で、ずいぶん役を勉強させてもらっています。恩人ですし、戦友のような気持ちですね。気心が知れていて、安心して(一緒に)お芝居ができる方でした」と、故人を悼みました。

 

仁左衛門が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 

 コロナ禍となって2年が過ぎ、「だんだんとお客様が戻ってきてくださった」と仁左衛門。「当初はとにかく不安でしたけれども、(歌舞伎の幕が開くのを)お客様が待っていてくださったありがたさをひしひしと感じました。客席の制限も徐々に緩和されてきて、以前より多く入っていただけるようになりましたので、それだけのお客様にお越しいただけるかどうかが勝負です。どうすればお客様が来てくださるか。そればかり考えているんですよ。(坂東)玉三郎さんとも、あの演目がいいかなと、いろいろと話し合っています。(歌舞伎座での六月大歌舞伎の第三部が)私の休演で演目が変更になりましたけれど、玉三郎さんとの『源氏店』(『世話情浮名横櫛』)も何とかリベンジして演らせていただきたいと思っています」と、胸の内を明かしました。

 

 6月以降休演していましたが、7月14日(木)から舞台に復帰。「皆様にご心配とご迷惑をおかけして申し訳なく思っております。大阪松竹座で元気な姿をお見せしたいと思っておりますので、ぜひ劇場へおみ足をお運びくださいませ」。

 大阪松竹座「七月大歌舞伎」は、24日(日)までの公演。チケットはチケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/07/16