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巳之助、隼人『NARUTO -ナルト-』への思い
8月4日(土)の初日を前にして、新橋演舞場の新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』に出演の坂東巳之助、中村隼人が、稽古の様子とあらためて公演に向けての思いを語りました。
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漫画からすくいとったものを余すことなく台本に
原作は全72巻の大作漫画。「きれいにまとめて一つのお芝居として面白く、原作を知らない人も知っている人も楽しめるようにつくってもらっているなと。G2さんが漫画を読み込まれ、そこからすくいとった部分を全部収めてくださっています」と巳之助が、台本の感想を述べると、隼人も、「ナルトとサスケの人格形成、成長していくうえでの大事なところはだいたい入っています」と、舞台作品という時間的制約のなかで満足のいく台本だったことをうかがわせました。
さらに巳之助は、「原作漫画は物語の根底の暗い部分、重い部分も作品の魅力の一つ。だから芝居にしがいがある。作品として物語を楽しんで、ハラハラしながら観ていただく作品になっていっていると思います」と稽古での手応えも感じている様子でした。
歌舞伎にしていく、歌舞伎になっていく
歌舞伎との親和性が高いのではといわれている漫画ですが、実際には原作で歌舞伎をモチーフにした箇所は数えるほどしかありません。「台本を読んでも、歌舞伎らしさは感じないと思います。立廻りや道具、衣裳、効果音、ツケ、そういった部分に歌舞伎の要素が入ってきて」(巳之助)、歌舞伎として立ち上がってくる舞台。そこで、「歌舞伎俳優が現代語でしゃべっても、せりふを粒だてたり、抑揚や癖がついているので、普通のストレートプレイにはならない」(隼人)。二人は稽古を通じての実感を率直に語りました。
漫画では大きなコマで決めぜりふが印象的に描かれますが、「表現方法としては歌舞伎の見得がいちばん近いものだと思います」と巳之助。原作が自然とそういう表現になっていくのと同じように「舞台でも自然とその場に落ち着いていく、そうなっていなければ、その場面はすでに失敗ということだと思います」。漫画の技法に込められた作者の思いをも、歌舞伎として表現していこうとする意欲がかいま見えました。
術の表現、立廻りの意味
原作は忍が修得した術を使って戦闘に挑むというバトル漫画。戦いが魅力ではあるものの、巳之助は「物語の根底に戦いがある、あくまでもストーリーに根ざした立廻り、戦うことに理由がある立廻り、アクションシーンであることを大事にしたい」と強調しました。ドラマが見えてくる立廻り、これが歌舞伎でも大きなカギになってきます。
「術に頼るというより、絡み方や体の動きで見せていく。サスケの立廻りでも、和楽器バンドの音楽に合わせて立ち廻るところも、聞き覚えのある鳴物に合わせて立廻りをするところもあります」。隼人は、漫画では描けても現実には表現できないことを、歌舞伎に置き換えることで成立させられることもある、演出家と話し合ってやっていると言います。プロジェクションマッピングなどで表現するところもあれば、古典歌舞伎の技法が合うところもあり、巳之助も「場面場面で、適宜、判断してやっています」。
原作漫画ファンを自認する二人がつくるナルトとサスケ
「ナルトは、最初から持っている火影(ほかげ)になるという夢、自分の言葉を曲げない、信念の揺るがない人物。論理立てて成長をとらえることはしたくない」と巳之助。かたや、「大人に振り回され、読者もついていけないほど考えが変わるサスケ。漫画ではキャラクターの個性と力でその矛盾を埋めていったけれど、舞台ではどうしたら納得してもらえるのか、できることをやっていきたい」と隼人。
その二人の前に立ちはだかる、猿之助と愛之助の演じるマダラ。「原作ファンとして普通に見て格好いいし、大きい」(巳之助)、「作品に重みと厚みを与えてくださる。敵が大きいほど、自分たちもそこに向けて成長できる」(隼人)と、先輩俳優二人の出演に喜びを隠しません。
初日に向け、稽古もいよいよ佳境へ。一人でも多くの人に「歌舞伎にふれていただきたい」と目を輝かせる巳之助、そのために「お客様が観たいものを」と意気込む隼人、二人の視線の先には、古典歌舞伎をご覧いただきたいという熱い気持ちがあります。新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』に込められたその思いは、決して揺らぐことはないようです。
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新橋演舞場「新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』」は、8月4日(土)から27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹で販売中です。