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歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 2月1日(木)、歌舞伎座百三十年「二月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 場内に入るや否や、目に飛び込んでくるのは草間彌生デザインの「愛を持って人生を語ろう」の祝幕。斬新な色使いとデザインで気持ちも新たに、高麗屋三代の2月の襲名披露の幕が上がりました。

 

 序幕は『春駒祝高麗』。梅香る如月の春が歌舞伎座に広がります。慶事に上演されることの多い『対面』が舞踊劇に仕立てられたもので、梅玉の工藤祐経の館でさまざまな踊りが繰り広げられます。そこへやってきたのが、春駒売りに身をやつした十郎、五郎の兄弟。工藤が二人に通行切手を渡して再会を約束し、全員が並んできまると、襲名披露の幕開きにふさわしい華やかなひと幕となりました。

 

 続いては、十代目幸四郎が2度目の大蔵卿長成に挑む襲名披露狂言『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』。門の向こうから現れた十代目を、歌舞伎座が割れんばかりの拍手と歓声で迎えました。1月の襲名披露狂言とはがらりと変わった直衣姿の幸四郎には、阿呆をよそおいながらも公家の気品が漂います。

 

 「奥殿」の物語では、変化に富んだせりふ回しと目に鮮やかな所作でお客様を引き込み、見事な長刀さばきも見せて本来の姿をあらわした大蔵卿。本心を明かし、再び阿呆に戻る大蔵卿の哀切が痛いほど伝わり、幕が降りても拍手が鳴りやみませんでした。

 

 新しい歌舞伎座に初めて響く、権五郎の「しばらく」の大音声。『暫』のおおらかな空気が場内に満ちていきます。三升の紋が入った大きな柿色の素襖を翻し、花道に座す海老蔵の権五郎。「高麗屋三代ご襲名」を祝って、「“幸”せ“染”めたる白鸚の叔父様につながる親父の口真似…」と、三人の名前を読み込んだツラネで邪気を払いました。四人がかりで肩脱ぎになり、ぐっとにらむ元禄見得が大きな拍手を呼び起こし、豪快な六方の引込みで荒事の魅力、面白さを堪能させました。

 

 昼の切は『井伊大老』。初演の井伊直弼は初代白鸚(当時 八代目幸四郎)でした。その初代は襲名披露狂言にするほどの当り役で、今回は、実父、初代白鸚の教えを受けた吉右衛門が勤めます。自らの施策が世に受け入れられず、鬼畜、国賊とまでといわれる身となって苦悩し、死をも覚悟している直弼。雀右衛門のお静の方に吐露するせりふの一つひとつが心にしみ入ります。そんな直弼にお静の方を通して穏やかな光明が当たる、情味あふれる物語です。

 曾祖父七代目幸四郎、初代吉右衛門が当り役とした『熊谷陣屋』の熊谷。染五郎として父の熊谷の舞台で役を勤めながら勉強を重ね、満を持して初役に挑んだのは8年前でした。そして、3度目にして初めての歌舞伎座での熊谷が襲名披露狂言。華やかな顔ぶれがそろい、菊五郎の義経と渡り合う熊谷が大きく見えます。立派な平山見得に拍手し、制札の見得に声をかけ、送り三重での引込みに涙して、お客様が十代目幸四郎熊谷の誕生を祝福しました。

 

 濃厚なドラマに続いては、『壽三代歌舞伎賑』。「芝居好きの江戸っ子なら来ずにいられるか」と、三代の襲名披露を前に気分も浮き立つ芝居前です。両花道に男伊達と女伊達の十八人が並んだ場内は壮観。藤十郎の芸者が艶やかな姿で駆けつけ、お上から厄除けの金の御幣も賜って、お客様とご一緒に手を締めたあと、いよいよ三人の「口上」が始まりました。「私ども高麗屋にとりまして、親子孫三代そろうての襲名は、37年ぶりと相成りまする次第にござりまする」と二代目白鸚が名のりを上げ、二人を紹介しました。

 

 「当月は、歌舞伎座の開場記念の公演以来の出演者の数。大一座によります大歌舞伎で襲名披露が行えますること、誠にありがたく心より御礼申し上げ奉りまする」と感謝した十代目幸四郎は、「歌舞伎の一翼を担うことを目指して、“歌舞伎職人”になる覚悟でござりまする」と述べて喝采を浴びました。八代目染五郎が、「当月は37年前の前回の三代襲名におきまして、父が勤めましたお役と同じ『仮名手本忠臣蔵』「七段目」の大星力弥を勤めさせていただいております」と続け、最後に白鸚が「初代松本幸四郎より数えまして300年」、こののちともに高麗屋三代のご後援をと願いました。

 

 歌舞伎座の三代襲名披露を締めくくるのは『仮名手本忠臣蔵』「七段目」。すでに当り役としている二代目白鸚が、新たな名前を得て見せる由良之助の色気に客席が酔います。山科へと忍んできた八代目染五郎の力弥の登場に、「染高麗!」と声がかかって大拍手。37年前の白鸚と染五郎が、ともに一つずつ代を重ね、二代目白鸚と八代目染五郎として花道で相対しました。初日のお軽と平右衛門は玉三郎と仁左衛門。三人が引き合って絵面できまると、幕が閉まるのが惜しくなるほどの景色となりました。

 

 ふた月目の襲名披露興行も幕開きから打ち出しまで、お祝いムードあふれる豪華な舞台が続いた歌舞伎座。外に出るとあちこちで、興奮冷めやらぬお客様の声が響いていました。

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 ご贔屓から贈られた祝幕。記憶に残る祝幕となりました

 2月は、これまでにない斬新なデザインの祝幕で、たくさんのお客様が記念にと撮影されていましたが、2階ロビーのこちらのコーナーもご注目です。

 

 歌舞伎座百三十年「二月大歌舞伎」は2月25日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

 

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 幸四郎の念願がかない、草間彌生作品3点が並んだ祝幕。『壽三代歌舞伎賑』での演出にご注目を! (C)YAYOI KUSAMA

2018/02/02