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シネマ歌舞伎『め組の喧嘩』を立川談笑が語る
12月3日(日)、東京 東劇で公開中の新作シネマ歌舞伎『め組の喧嘩』で、落語家の立川談笑のトークイベントが開催されました。
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翌々日の12月5日は、『め組の喧嘩』でめ組の辰五郎を勤めた十八世勘三郎の命日。あれからもう5年が経ちました。トークイベントに登壇した談笑師匠は、勘三郎と親交のあった落語家、立川談志の弟子でもあります。
十八世勘三郎の思い出話もたっぷりと
「私は『め組の喧嘩』を落語に仕立てて演じております。そもそも落語を昔から伝わったままではなく、今の人たちに十分楽しんでもらえるように手を加えてつくっておりまして、『め組の喧嘩』をつくる参考にしたのは、師匠の談志の落語と、これから上映する平成中村座での舞台でした」。前日の独演会のトリネタで『め組の喧嘩』を演じたばかりという談笑師匠、縁の深い作品だけあって話のネタが尽きません。
「歌舞伎はビジュアル的に素晴らしい。それを落語でどう反映できるのかに、意を砕いて落語をつくりました。勘三郎さんの歌舞伎と私の落語、どういうふうに違うのか、比べていただけると楽しいんじゃないでしょうか」。師の談志と勘三郎の親交に加え、「かみさんが昔から勘三郎さんの後援会に入っていた」という縁もあるそうで、初対面から「誰とでも分け隔てなく話す方でした」と、勘三郎の思い出話もたくさん飛び出しました。
「事実を心に響くように編集するのがエンターテインメントの仕事」
『め組の喧嘩』は文化2(1805)年に起きた事件を元につくられた芝居。「私が六代目を名のっております談笑、初代がちょうどこの時代に活躍しているんですね。きっと事件を目の当たりにしていると思います。場所が芝神明、今の芝大神宮様。この大神宮様、昔はもっと広かったのが、増上寺に取られちゃったとか…」、話はどんどん広がって、談笑独演会さながらに会場が笑いに包まれました。
相撲と火消しの大喧嘩について、「芝居の初演の明治23(1890)年、この頃にできた落語にもいくつか残っていますが、私がみるにこれは、火消しと相撲の喧嘩は、江戸っ子と田舎者の対立だと思うんです」と、持論を展開。「全国から裸一貫で出て来て力が強く、刀も差してなかば侍のような相撲取り。かたや火消しは江戸っ子の星。この構図は、実は明治維新と同じ。薩摩や長州から出て来て我が物顔で東京をのし歩いているのが、面白くない江戸っ子。フラストレーションがずいぶんたまっていたんじゃないかと、私は思います」。
同じ図式が落語の「首提灯」「棒鱈」にもあり、「お相撲さんが関わる大喧嘩なら、もっと昔、今昔物語集や宇治拾遺物語にも出てくるんです。相撲取りと大学生の大喧嘩で、それに比べたら『め組の喧嘩』も新しい」。汲めども尽きぬ談笑師匠の『め組』話にのめり込んでいるうちに時間となり、最後は勘三郎のエピソードにからめ、「平成中村座の中村勘三郎さんの雄姿、ぜひぜひ皆さんお楽しみください」と締めくくって本編上映が始まりました。
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新作シネマ歌舞伎『め組の喧嘩』は全国56館で公開中。お近くの映画館でご覧ください。