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玉三郎が語る新作シネマ歌舞伎『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』
2018年1月13日(土)より全国56館で公開される、新作シネマ歌舞伎『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』で、出演の坂東玉三郎が作品への思いを語りました。
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一人の花子を五人で踊る面白さ
シネマ歌舞伎にもなっている『京鹿子娘二人道成寺』があり、音羽屋が三代で披露した『京鹿子娘三人道成寺』もあったので、「五人でもいいんじゃないか」と、一昨年の12月、『京鹿子娘五人道成寺』が歌舞伎座で上演されました。そこには二つの記憶がありました。
一つは、「お客様が華やかで楽しいとおっしゃってくださった」、第四期歌舞伎座の閉場式(平成24年4月30日)の五人の『京鹿子娘道成寺』。もう一つは、子どもの頃に見た第一回俳優祭(昭和32年7月30日)の東京体育館で、四方から花道が延びた舞台。七世梅幸、六世歌右衛門ほか女方と新派の女優の八人が踊った光景が、「華やかで忘れられない。ショーとしての素晴らしさ。ただ人数が増えるからではなく、花子という一人を分身にするから面白いんでしょうね」。
シネマ歌舞伎にすることで生まれた面白さ
しかし、シネマ歌舞伎にしようとしたところ、舞台の面白さの前に、「二次元(=映像)の世界になることの難しさ」が立ちはだかりました。ほぼ同じ鬘(かつら)、衣裳なので、「画面が切り替わると誰が誰だかわからない。誤算でした。そこで、踊り手の思いを一つずつ別々にして、曲の間にはっと差し込むような感じで入れていくと、それぞれの思いの中で、次の踊りが見られることに」。勘九郎、七之助、梅枝、児太郎がインタビューに答える形で思いを述べたあとに、それぞれの踊りの場面が続きます。
結果として、「『京鹿子娘道成寺』は、小さな短編が連なってできていることがわかりました。舞台では、それぞれからはみ出てしまった個性を、どうやって五人でそろえるかということに注視していたのが、まったく逆になりました」。
舞台では、誰もが踊りたいと思ってもなかなか踊ることのできない『娘道成寺』ということで、「力まかせになって、花子という役より出ていってしまう。(共演の四人には)役からはみ出ないように、ということをずっと言っていました」。上演後、シネマ歌舞伎用のインタビューを聞いてみると、「皆が言ったことの奥を理解し、彼らなりの言葉で説明をしている。うれしかったですね」。教えるには稽古をするよりなにより、一緒に舞台に立つことが一番と考える玉三郎に、シネマ歌舞伎がもたらした思わぬ発見だったようです。
歌舞伎俳優としての舞台裏へのこだわり
玉三郎の話は、短いやりとりで勘九郎と確認し合う舞台裏のシーンからもうかがうことができます。舞台裏といっても、「変な意味の種明かしにならない、舞台の夢を壊さない程度の裏をお見せする」のが玉三郎の信条。今回は、「舞台裏で五人が支度しているとき、けっこう壮観だったんです。これは一人の『道成寺』では、ないこと。また、これだけ裏で働いている人がいればこそ、五人の踊りが見られるということも、映像を見ていただくとよくわかります」。
舞台裏の見せ方にも工夫があり、ただのドキュメンタリーにならないようにと、現場の生の音は入れていません。「汗もかいて、着替えもし、脱ぎもするけれど、皆さんがご覧になって、憧れられるような支度を見せるのが理想。裏でも一挙手一投足、油断のできない時間をご覧いただきます」。シネマ歌舞伎だからこそ実現できた、玉三郎の思いです。
客観性を持ってベストの見せ方を探る
「座っている苦痛がなければ、一年中していたい」ほど、映像の編集作業が好きで、シネマ歌舞伎の編集に積極的に携わってきた玉三郎。日活の黄金時代を支えた編集の鈴木晄氏が師匠だったと言い、スタジオで作業した映像を後日あらためて自宅で見るなど、「時間と場所をずらして確認することで、客観性を得る」ことを大事にしています。見たいところを観客が選ぶ舞台と違い、見せるシーンを選ぶ映像には、その客観性がなければならないと語りました。
客観性をもって『二人椀久』を見て、「すごくオーソドックスにつないでみたら、『五人娘道成寺』で盛り上がり、『二人椀久』ですっと清涼感のある終わりという順番が決まりました」。女方四人に交じって踊った勘九郎が、椀久としてファッと出てくる感じも面白いと続け、「勘九郎さんは女方も踊られるので椀久がとてもよかった。非常に哀感のある、哀愁のある椀久でございました」。
舞台からシネマ歌舞伎へ――。自身としては13本目となるシネマ歌舞伎出演作『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』は、これまでとはまた違うアプローチでつくり上げられた新たな作品として、13日(土)より全国公開されます。
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新作シネマ歌舞伎
『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』
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■公開
2018年1月13日(土)
■上映館
■上映時間
2時間3分
■料金
当日:2,100円(税込) 学生・小人:1,500円(税込)
※《月イチ歌舞伎》特別鑑賞ムビチケカードご利用可。
※特別鑑賞ムビチケカードは、1月12日(金)までの販売。
販売場所:上映映画館、歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座の切符売り場。売切れ次第終了。
※プレイガイドではムビチケではない鑑賞券を販売。
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