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猿之助、巳之助が語る「松竹大歌舞伎」秋季公演
10月1日(土)から全国17カ所で行われる「松竹大歌舞伎」に出演の市川猿之助、坂東巳之助が、公演への意気込みを語りました。
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今年の「松竹大歌舞伎」秋季公演で上演されるのは、一昨年の秋に新橋演舞場で猿之助が初めて挑んだ『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』です。しかも、宙乗りと早替り、眼目となる二つを猿之助と巳之助のダブルキャストで見せます。
「物語の発端、眼目である化け猫の宙乗り、早替りをお見せする所作事を中心にして上演することになりました。早替りや宙乗りは教えて、教えられるものではなく、自分が元気な姿を後輩に見てもらうのが一番早い。こういうものがあるということを、少しでも受け取ってもらえたら」と猿之助が言うと、「こんなにありがたいことはございません。なるべくたくさんのことを吸収し、自分が今できること以上のことをして、全国の皆様に喜んで、楽しんでいただけるように、精いっぱい勤めさせていただきます」と、巳之助が応えました。
元気な姿を見せることで伝えていく
猿之助は、「伯父(猿翁)から、フランス文学者の桑原武夫先生に言われたと聞いているのですが、40歳、50歳になったら、次に教えることを考えるようにと。技術は年をとるほど素晴しくなるけれど、体力的なものは若いときがいいに決まっている、それは若者の特権。だから、自分が元気なうちにその姿を見せなさいと、私も言われていましたので」と、最近、階段を駆け上がると息が切れるし、などと笑いを交えて語りました。
13役早替りについては、「歌舞伎の踊りの主だった役柄がほぼ入っているので、その踊り分け、一つひとつをきちんと見せる。エッセンスが凝縮されていないと面白くないですから。そして、替り目の鮮やかさをお見せすること。しかし、どこかに、猿之助なら猿之助、巳之助なら巳之助であることを一本通さないと意味がありません。あ、また、出てきたと思わせる、つまり、役者としての自分と役とのバランスです。鮮やかすぎてもいけなくて、わざと裏でばたばた音をさせて走り、今、替わっているなと思わせるのも技術です」。
「早替りは技術の一つ、それを巳之助君が身につけてくれたら。坂東家は変化舞踊を得意とする、本家本元ですから、これから変化舞踊をするときに困らないんじゃないかと」と、猿之助。巳之助は「19歳のとき、初めて全国を周る公演で猿之助の兄さんが(『白浪五人男』の)弁天小僧をなさったとき、稲瀬川勢揃いの場で赤星十三郎を勉強させていただいた思い出がございます。そして今回の全国公演がこんな形になろうとは、寝耳に水、晴天の霹靂、微塵も思い寄らなかった」と、驚きの大きさを表しました。
責任をもってくらいついていきたい
スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』での活躍後、巳之助を見て、「舞台に出てきたときのお客様の反応が、明らかに以前と違った。出でお客様の心をつかむには華がないといけないけれど、華は自分で身につけるしかない。今回の公演で巳之助君が、芸以外の気迫、迫力、先輩方の持っていらっしゃる厚み、それらを得られることにつながれば」と、猿之助は語りました。
「猿之助の兄さんは、殻を破らなければ乗り越えられないようなお役をいつもさせてくださる。なんとか応えられるように、くらいついていけるようにと思ってまいりましたが、今回は、これまでで最高の大きな役割を任せていただいたので、大きな責任をもってしっかりとくらいついていきたい」。一つの公演で、猿之助と同じ役を演じることを重みを、あらためてかみしめるかのような真剣な面持ちで、巳之助が心境を述べました。
さらに、もう一つの眼目である宙乗りについて猿之助は、「伯父の巡業公演と同じく、舞台の上手(かみて)から下手(しもて)への宙乗りになりますが、距離があまりありませんから、照明など工夫をして距離を短く感じさせないようにしたい」と、会場に合わせた工夫を検討していることを明かし、「いずれは、宙乗りと本水がどこでもできるような仕組みを考えたい」と、とどまることのない意欲も見せました。
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