鴈治郎が語る、南座「吉例顔見世興行」
11月30日(月)から始まる京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 四代目中村鴈治郎襲名披露」に出演する中村鴈治郎が、1年をかけて行われた襲名披露興行の掉尾を飾る公演に向け、その胸の内を語りました。
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鴈治郎のまねきが上がる!
「去年は自分の名前がまねきの中にないのを見るのが、なんとも言えず寂しかった。それが今年は鴈治郎と藤十郎のまねきが並ぶ…」。2年ぶりの顔見世となる鴈治郎には、今年の出演に襲名以上の特別の感慨があるようでした。
また、顔見世への思いとは別に、鴈治郎には南座というと、「『曽根崎心中』の徳兵衛に代役で出演することになったとき(昭和55年12月)、いきなり祖父の、(二世)鴈治郎の楽屋に一人で入らせてもらってね…」という特別の思い出があります。今度はその楽屋に四代目として鴈治郎の名札がかかります。
気持ちで動く『河庄』治兵衛
鴈治郎といえば『河庄』。「やはりイメージがついて回ります。襲名披露の最後となる顔見世で『河庄』、よかったと思います」。4月の歌舞伎座では花道の「魂抜けてとぼとぼ」の出で、「無言になる状況が何秒かあるのですが、しーんとした歌舞伎座がたまらなく恐ろしかったり、優越感を持ったり。一挙手一投足を皆さんが見ていることを感じずにはいられない空間でした」。揚幕の中から体が揺れていたのは、「歩いている延長で花道に出ていったようにしたいから」とも言います。
気持ちが途切れるとできない芝居、出てしまったらなるようにしかならない芝居で、「歌舞伎座では何日目からか、幕が閉まるときにすっと座ってしまいました。でも、南座では立っていたい、と思うかもしれません」と言う鴈治郎。「治兵衛は恋に病い、裏切られて腹を立て、兄にはグチグチ言い訳し、ひとり小春を思い出してしゃべる。お客様にもその世界に入っていただかないと」と話し、型としてではなく、気持ちで動いている、それこそが『河庄』治兵衛なのだと語りました。
待ちに待った『土屋主税』
自分は父(藤十郎、三代目鴈治郎)より、二世鴈治郎に近いのではと常々口にしている当代としては、襲名披露でぜひやっておきたいと考えていたのが『土屋主税(つちやちから)』です。「二代目は独特の感じでやっていました。真似はできないけれど、やっぱりそれらしくしたりするのかな。いい意味で“クサく”、さらっとはしていない、そういう芸だという気がします」。
「気持ちのいい役、というより、気持ちよくしないとだめでしょう。照れくさくやったりしたらいけません。これはやっぱり12月、顔見世でやらせていただきたいと思っていました」。襲名披露の最後に勤める土屋主税、大好きなものを最後にとっておいたと言わんばかりに、満面の笑みを見せました。
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1月の大阪松竹座から始まった襲名披露興行ですが、「なんだか、ずいぶん前からやっている気もするけれど(笑)、締めくくりを生まれ故郷の京都でできることがうれしいし、楽しみです」。南座出演は昨年の9月以来、鴈治郎としては初出演、「お客様がご覧になって、“鴈治郎”を判断してくださることになると思うんですけど、ああ、やっぱり鴈治郎やな、うれしいな、と思ってくださったらいいですね」。
京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 四代目中村鴈治郎襲名披露」は、11月30日(月)から12月26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹にて販売中です。