染五郎、勘九郎、七之助『阿弖流為』開幕に向けて
7月5日(日)、新橋演舞場で、歌舞伎NEXT『阿弖流為(あてるい)』が初日を迎え、開幕を前に出演の市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助が意気込みを語りました。
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舞台稽古の熱気も冷めやらぬうち、稽古着のまま会見場に現れた三人。染五郎は「ものすごいものをやろうとしている、その強い気持ちを信じてやるしかない」と、力強い眼差しを向けました。
充実した稽古を重ねて迎える初日
演出家のいる稽古場には慣れている勘九郎と七之助ですが、今回、いのうえ演出を経験しているのは染五郎だけで、勘九郎は「稽古では皆が頼りにしていて、頼れる兄貴のような存在でした」と振り返ります。「早くから稽古場に来て遅くまでやっているのを見ると、自ずと皆がやらなきゃいけないと、そういう気にさせてくれる先輩でした」と七之助も続け、染五郎は「やること、覚えることが多くて大変なので…」と少し照れ笑い。蝦夷の長は、稽古場でも長として皆を牽引していたようです。
いのうえ演出といえば、激しい立廻りもその特徴の一つです。「怪我なく万全の状態で初日を迎えられたことが、一番よかったと思います」と染五郎。「女優陣のいる劇団☆新感線の稽古場なら黄色い声援も飛ぶんでしょうけど、こちらはおじさんのうめき声しか聞こえない…。(笑)そこからやっと脱出してお客様、今日から女性の方が観てくださる!」と、勘九郎はフラストレーション解消です、と冗談めかしながら、立廻りの出来に自信を見せました。
立廻りでは神の化身である龍と阿弖流為との戦いも、みどころの一つとなっています。「あの人数で扱う大きな龍。稽古は大変でした」と明かしながらも、「ストーリー、立廻り、芝居…、すべてがみどころです。今まで見たことのなかったものを見ていただく。ですから、みどころは見ていただく方に感じてもらえれば」と染五郎は語りました。
新しい歌舞伎誕生の生き証人に
「やったことのないもの、新しいことを探してつくったわけではありません。ただただ『阿弖流為』という芝居をすごいものにつくろうとしただけです。時代を生き抜いてきた古典の傑作のすごさを知れば知るほど、すごいなと言っているだけでは口惜しい、それを今つくれないだろうかというのが、新しくものをつくるときのエネルギーになっています」
染五郎は、新たな歌舞伎の誕生には、歌舞伎が持つ歴史、作品など、歌舞伎のすごさがあったことを強調しました。「今までになかった歌舞伎の誕生。その第一歩の生き証人になっていただきたい」と染五郎が語りかけ、「皆が信じて同じ方向を向いて稽古してきたので、あとはそれをぶつけるのみ。今はそう思います」と、七之助も数時間後に迫った開幕に向けて、表情を引き締めました。
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新橋演舞場 歌舞伎NEXT『阿弖流為』は、27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹にて販売中です。