勘九郎、七之助が語る、2カ月連続の追善公演
10月歌舞伎座、11月新橋演舞場と2カ月にわたる「十七世中村勘三郎二十七回忌 十八世中村勘三郎三回忌 追善」公演に出演する中村勘九郎、中村七之助が、公演への思いを語りました。
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「父は祖父の二十七回忌の公演を考えていましたが、まさかその追善される側に、父が加わるとは…。やらせていただく以上はいい芝居を、楽しんでもらえるものをつくりたい。そのためにしっかりしないとと、自分を鼓舞しています」と、2カ月連続の追善公演という、半世紀に一度あるかないかの大きな公演に向け、勘九郎は隠し切れない「緊張とプレッシャー」のなかにも、強い意志を感じさせる挨拶で切り出しました。
「父は生前、兄弟仲よくと言っていましたが、一人だったらこんな公演はとてもできなかったと思うと、本当に二人でよかったとあらためて思いました」と七之助も続け、二人は追善公演ができることへの周囲への感謝を何度も口にし、「一所懸命、精一杯するしかありません」と真剣な表情を崩しませんでした。
ゆかりの歌舞伎演目が並ぶ
ギネスブックに載るほど数多くの役を手掛けた十七世勘三郎ですから、「父は祖父について、狂言立てに困らない、追善がこんなに楽な役者はいないと言っていました。祖父も父も当り役がいっぱいで、二人は素晴らしい役者だったんだなと、今回あらためて思いました」と七之助。
ずらりと並んだゆかりの演目のうち、二人は『伊勢音頭恋寝刃』では福岡貢(勘九郎)、お紺(七之助)、『寺子屋』では武部源蔵(勘九郎)、戸浪(七之助)、『鰯賣戀曳網』では鰯賣猿源氏(勘九郎)、傾城蛍火(七之助)に出演。七之助は『野崎村』お光も勤めます。
勘九郎も、「父が喜んでくれていると思います。これも皆様の力があってできることですから、その期待に、倍返しで応えないといけません。あ、これは流行語になる前、僕らが子どもの頃から父はご期待には倍返し、十倍返しでと言っていたんです」と、懐かしい思い出とともに語りました。
さらに追善公演の翌月、12月には南座でも「十八世中村勘三郎を偲んで」と冠し、十八世勘三郎が新しい歌舞伎座での出演を望んでいたという『仮名手本忠臣蔵』「七段目」が上演されます。「いくら追善といっても、これほど多くの役をさせていただくことはないと思うので、本当にありがたい」と、幸福感をかみしめるように勘九郎は話しました。
新派公演への思い
『鶴八鶴次郎』は十八世勘三郎が勘九郎にやりなさいと言っていた作品。「父の舞台を見ていたし、祖父の映像も見ており、やりたいものの一つでしたのでうれしい。でも、まさか兄弟でやるとは…」と言う勘九郎の鶴次郎で、鶴八は七之助。「初めての新派出演でこんな大役。伯母(波乃久里子)によく聞いて勤めます」。
歌舞伎では女性を演じるのではなく女方としてやっていると言う七之助は、「新派は歌舞伎とは声の出し方も違うと思うので、先輩方によく教わりたい」と、新派への出演が新たな一歩になることを予感しています。
『京舞』は昭和62(1987)年12月国立劇場で、十七世勘三郎が片山春子(三世井上八千代)役を勤め、娘の波乃久里子に愛子役をさせて上演しようとした矢先に入院、千穐楽には病院から駆けつけて舞台挨拶をしたほど、思い入れの強かった作品です。その無念の思いを受けて十八世勘三郎も「絶対やりたい」と言っていたそうで、2代にわたる上演への熱望を受け、水谷八重子の春子、波乃久里子の愛子で勘九郎が片山博通を勤めます。
また、『京舞』の「劇中追善ご挨拶」には七之助も出演し、毎回、故人ゆかりのゲストの出演も予定されています。
「父は、そばにいます」
十八世勘三郎の訃報は一昨年の12月5日。「この2年、常に父がそばにいました。父だったらこうするだろうとか、せりふのひと言、間、空気といったものを意識していました」と勘九郎が語ると、七之助も「舞台に出る前には、見てくれているという気持ちで、幕が閉まったときは、今日はこう言ってくれるんじゃないかと考え、やってきました」と、二人にとっての父、十八世勘三郎の大きさが感じられる言葉が続きました。
特に今年は6月のコクーン歌舞伎、7月の平成中村座ニューヨーク公演、8月の納涼歌舞伎と、「父がくれた宝物」、「父がまいてくれたタネ」を大切にやってきたと強調。七之助は「諸先輩方がいつも自分たちの芝居を見て何かおっしゃってくださると、ああ、父は本当に愛されていたんだなと感じます」と語りました。
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歌舞伎座「十月大歌舞伎」は10月1日(水)~25日(土)、新橋演舞場「十一月新派特別公演」は11月1日(土)~25日(火)の公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹にて、「十月大歌舞伎」は9月12日(金)より、「十一月新派特別公演」は9月25日(木)より販売開始です。