公演情報詳細
錦秋名古屋 顔見世 |
当公演は終了いたしました。
2015年10月3日(土)~25日(日)
劇場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(中ホール)
演目と配役
昼の部
一、あんまと泥棒(あんまとどろぼう)
あんま秀の市 泥棒権太郎 | 歌六 錦之助 |
二、藤娘(ふじむすめ)
藤の精 | 芝雀 |
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
両国橋の場
松浦邸の場
同 玄関先の場
松浦鎮信 大高源吾 近習 鵜飼左司馬 同 江川文太夫 同 渕部市右衛門 お縫 宝井其角 | 吉右衛門 又五郎 歌昇 種之助 吉之助 米吉 歌六 |
夜の部
平家女護島
一、俊寛(しゅんかん)
俊寛僧都 海女千鳥 丹波少将成経 平判官康頼 瀬尾太郎兼康 丹左衛門尉基康 | 吉右衛門 芝雀 錦之助 歌昇 又五郎 歌六 |
二、太刀盗人(たちぬすびと)
すっぱの九郎兵衛 従者藤内 目代丁字左衛門 田舎者万兵衛 | 又五郎 種之助 吉之助 錦之助 |
三、浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)
山三浪宅
鞘当
名古屋山三 傾城葛城/お国/茶屋女房 浮世又平 不破伴左衛門 | 錦之助 芝雀 橘三郎 又五郎 |
みどころ
昼の部
一、あんまと泥棒(あんまとどろぼう)
NHKのラジオドラマとして昭和26(1951)年に放送された村上元三の作品が、後に舞台化されました。登場人物は、あんまと泥棒の二人だけ。コミカルな対話劇になっています。
盲目の秀の市は、あんまで生計を立てています。ある日の夜更け、泥棒の権太郎が秀の市の家に押し入り、「金を出せ!」と凄みます。最初は怖がっているように見えた秀の市ですが、泥棒が怖くはないようで、権太郎の要求をのらりくらりと交わし、とぼけるばかり。いつの間にか説教を始め立場は逆転し、酒をせがみ、ついに自分の不幸な身の上話を語り始め、権太郎の同情を誘います。気の毒に思った権太郎は、秀の市に金まで与え、退散してしまいます。これに感謝した秀の市でしたが、権太郎が去ると、一人ほくそ笑むのでした。
二、藤娘(ふじむすめ)
大津絵を題材にした女方の舞踊の代表作品。もともとは絵から抜け出した人物が踊る五変化の一つでしたが、近年では、藤の花の精が娘の姿で現れ、女心を踊る作品として独立して上演されます。
松の木のもとに藤の花房を手にした愛らしい娘が現れ、女の切ない恋心や、恋人と酌み交わす酒に酔う様子を艶やかに踊り、軽やかな松尽くしへと続きます。華やかな舞台装置と多彩な衣裳など優美な世界に誘われます。
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
この作品は、平戸藩主・松浦鎮信を主人公とした『忠臣蔵』外伝で、赤穂浪士による吉良邸討ち入りの前日から当日を描き、初代中村吉右衛門の当たり役を集めた「秀山十種」に選ばれています。
吉良邸の隣に住む松浦鎮信侯は、浅野内匠頭が殿中で吉良上野介に斬りつけて切腹を命じられたことに深く同情し、赤穂浪士の一人、大高源吾の妹お縫を腰元として召し抱え、かわいがっていました。ところが、その大の赤穂びいきの期待に反し、赤穂浪士がなかなか敵討ちをしないので業を煮やしています。
俳諧の師匠である宝井其角が昨日会った大高源吾の様子を話すと、松浦侯は急に機嫌が悪くなり、お縫を連れて帰れと当たり散らす始末。しかし、昨日「年の瀬や 水の流れと 人の身は」と其角が詠みかけると、源吾が「明日待たるる その宝船」と付け句して立ち去ったことを伝えると、その心中をくみ取って、機嫌は一変。帰りかけた其角とお縫を呼び戻すところに、突如として隣家から太鼓の音が聞こえてきます。それは大石内蔵助が打つ山鹿流の陣太鼓だと察した松浦侯は、付け句の通り討ち入りしたと喜び、歓喜の絶頂に達します。やがて、本懐を遂げたことを知らせに訪れた大高源吾と対面します。
夜の部
一、俊寛(しゅんかん)
俊寛僧都は平家打倒を謀りますが、その密議は裏切りから清盛に漏れ、丹波少将成経、平判官康頼とともに南の果ての鬼界ヶ島に流罪となりました。三人が流人の生活に疲れ果てている中、成経が島に住む海女の千鳥と夫婦になります。俊寛は喜び、ひとさし舞って二人の門出を祝います。そこへ都から赦免船が到着しますが、上使の瀬尾太郎が読み上げる赦免状に俊寛の名前がありません。がっかりしているところに、もう一人の上使、丹左衛門尉基康が現れ、俊寛の赦免が告げられます。晴れて三人は千鳥と共に乗船しようとします。ところが、瀬尾が千鳥の乗船を許さないため、千鳥は浜に残って嘆き悲しみます。俊寛は千鳥の乗船を瀬尾に請い、聞く耳を持たない瀬尾を刀で切り捨てます。若い成経と千鳥のため、上使の瀬尾を殺した罪を背負って俊寛は島に残ります。そして、必死の思いで岩場を登り、どんどん遠ざかる赦免船に思いをはせながら見送るのでした。
絶海の孤島に残された俊寛の孤独と悲劇を描く近松門左衛門の名作をご堪能ください。
二、太刀盗人(たちぬすびと)
狂言からそのエッセンスを取り込んで歌舞伎にアレンジした松羽目ものの楽しい舞踊劇です。明治末から大正にかけ『身替座禅』や『棒しばり』など傑作を手がけた岡村柿紅が、軽妙に仕立てました。
浮かれ気分で大都会の京へやってきた田舎者の万兵衛と、この男から黄金造りの太刀を奪い取ろうとするすっぱ(盗人)の九郎兵衛の二人。悪智恵を働かせるすっぱは、どこか大らかなところもある小悪党。二人の争いを裁くことになった目代の問いに対し、田舎者の答えに聞き耳をたてたすっぱが同じように答えたり、身の潔白を連れ舞いで証明するくだりでは、すっぱが田舎者を真似て舞が少しずつ遅れていくところが笑いを誘います。
三、浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)
佐々木家の家臣名古屋山三は、腰元岩橋と深い仲になり、不義密通の咎で、家を追放されています。浪人となった山三が、浅草の鳥越の貧乏長屋で下女のお国と暮らしているところへやって来たのは、吉原の傾城葛城。実は葛城は岩橋で、山三の父の敵と思われる不破伴左衛門と、紛失した重宝の刀の行方を尋ね、その様子を伝えに来たのでした。一方、お国は、不破伴左衛門に仕えていた父・浮世又平から山三毒殺の計画を打ち明けられ、自らの命を犠牲にして、慕い続ける山三を守ろうとしました。暗闇の中、そうとは知らず奪われた刀の詮議のため吉原へ向かう山三を見送り、お国は息絶えてしまいます。
場所は変わって桜が満開の仲之町、不破伴左衛門は雲に稲妻模様、名古屋山三は雨に濡れ燕模様という伊達な姿で思わぬ再会をします。二人はすれ違う際に刀の鞘が当たったことから斬り合いとなりますが、茶屋女房がそれを留めます。
大南北と呼ばれる四世鶴屋南北ならではの華やかな舞台をお楽しみください。
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