公演情報詳細
演目と配役
昼の部
一、八重桐廓噺(やえぎりくるわばなし)
嫗山姥
荻野屋八重桐 白菊 太田十郎 沢瀉姫 腰元お歌 煙草屋源七実は坂田蔵人時行 | 菊之助 萬次郎 亀蔵 松也 市蔵 團蔵 |
二、忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの)
将門
傾城如月実は滝夜叉姫 大宅太郎光圀 | 時蔵 松緑 |
三、芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)
政五郎 女房おたつ 金貸おかね 錺屋金太 桶屋吉五郎 大工勘太郎 左官梅吉 大家長兵衛 | 菊五郎 魁春 東蔵 権十郎 亀蔵 團蔵 彦三郎 田之助 |
四、勢獅子(きおいじし)
鳶頭鶴吉 鳶頭亀吉 鳶の者 同 同 芸者お京 | 梅玉 松緑 松江 亀三郎 松也 雀右衛門 |
夜の部
一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
頓兵衛 新田義峯 うてな 六蔵 お舟 | 富十郎 友右衛門 松也 團蔵 菊之助 |
江戸女草紙
二、出刃打お玉(でばうちおたま)
お玉 おろく どんでんの新助 おかね 三井平之助 僧宗円 おふさ 茶屋女お金 居酒屋甚五郎 桔梗屋伊兵衛 近江屋与兵衛 森藤十郎 広円和尚 増田正蔵 | 菊五郎 時蔵 友右衛門 萬次郎 権十郎 亀三郎 松也 歌江 市蔵 右之助 家橘 團蔵 田之助 梅玉 |
三、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)
更科姫実は戸隠山の鬼女 山神 侍女野菊 腰元岩橋 従者左源太 従者右源太 局田毎 平維茂 | 海老蔵 尾上右近 市川ぼたん 亀蔵 亀三郎 市蔵 門之助 松緑 |
みどころ
昼の部
一、八重桐廓噺(やえぎりくるわばなし) 嫗山姥
以前は傾城、今は傾城の恋文の代筆をして歩く八重桐(菊之助)は、大納言岩倉兼冬の館の前で、姿を消した夫の坂田蔵人時行(團蔵)と自分しか知らないはずの聞き慣れた歌を耳にします。館に入った八重桐は、兼冬の娘の沢瀉姫を囲む人々の中に、煙草売りに身をやつした時行を発見。乞われるままに、自分を棄てた時行への複雑な想いを込めて、その境遇を立て板に水のごとく語り始めます。
別名「しゃべり」と呼ばれる女方のひとり語りが眼目の一幕。後に坂田金時を身ごもることにもなる強き女八重桐役に、菊之助が初めて挑みます。
二、忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの) 将門
朝廷に反旗を翻し、滅んでいった平将門。その古御所に蝦蟇の妖術を使う妖怪が出没すると聞き、大宅太郎光圀(松緑)が征伐にやって来ます。現れたのは、島原の傾城如月と名乗る妖艶な美女(時蔵)。光圀に気づかれ、実は平将門の遺児滝夜叉姫と本性を顕すと、大蝦蟇を従えて光圀に抵抗します。
薄暗い廃墟に、豪奢な遊女と大蝦蟇。妖しい耽美の世界が展開します。
三、芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)
大酒飲みで怠け癖のある魚屋の政五郎(菊五郎)は、芝浜海岸で大金入りの革財布を拾います。早速、左官の梅吉(彦三郎)ら仲間を集めて大酒盛り。が、一晩寝て目覚めると、女房のおたつ(魁春)は、夢でも見たのだろうと取り合わず、借金の返済催促に来たおかね(東蔵)も無駄足に。反省した政五郎は、一念発起して断酒。まじめに働き出して3年の月日が流れます。
政五郎を思いやるおたつと、その事情を知った大家の長兵衛(田之助)による英断が、夫婦に幸をもたらすという、三遊亭円朝の人情噺の舞台化。当り役の菊五郎の政五郎が、笑って泣かせます。
四、勢獅子(きおいじし)
ここは赤坂の日枝神社。山王祭に顔を見せた芸者お京(雀右衛門)と鳶頭鶴吉(梅玉)や亀吉(松緑)たちが、ほろ酔い加減で賑やかに踊ります。
さまざまな江戸っ子の風俗が楽しい、晴れやかな常磐津舞踊です。
夜の部
一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
六郷川の矢口の渡し。渡し守の頓兵衛(富十郎)は、先の足利と新田の争いで、褒美の金欲しさに足利方の手先となり、新田義興の溺死に加担した強欲者です。この家に、義興の弟の義峯(友右衛門)が、愛妻の傾城うてなを伴って訪れます。頓兵衛の娘で、父とは似ても似つかぬ気立てのいいお舟(菊之助)は、気品ある義峯にひと目惚れ。連れの女性は妹と聞き、積極的に義峯に迫ります。しかし義峯を新田の落人と知った頓兵衛は、再び金目当てに、床下から義峯を狙います。手応えを感じた頓兵衛が刀の先を見ると、そこには苦しむ娘の姿が。お舟は自ら義峯の身替わりとなり、彼らを逃がしたのです。
平賀源内が福内鬼外のペンネームで書いた浄瑠璃で、『義経千本桜』の「すし屋」の趣向を採り入れるなど、見せ場に富む作品。菊之助のお舟は初役、富十郎の頓兵衛は36年ぶりという、見逃せない一幕です。
二、出刃打お玉(でばうちおたま)
かつて出刃打ちという曲芸で評判を取ったお玉(菊五郎)は、今は谷中の岡場所で、隠れ遊びに通う老僧侶の広円和尚(田之助)などを相手に、客を取る日々を送っています。ある日、敵討ちを前に緊張の面持ちで訪れた武士の増田正蔵(梅玉)に心打たれたお玉は、正蔵の仇討ちを、出刃打ちの技で手助けし、ひっそりとその場を去ります。その二十八年後、おろく(時蔵)の営む出合い茶屋で、ふたりは再会を果たしますが…。
池波正太郎が、故・尾上梅幸の求めに応じて書いた、気っぷのいい、男勝りの女の話。梅幸の長男の菊五郎にとっても、適役となるでしょう。
三、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)
紅葉が美しい戸隠山。平維茂(松緑)が、従者を伴いやって来ると、ひと足先に酒宴を催している一行の姿が目に留まります。その主である更科姫(海老蔵)直々に誘いを受けた維茂は、酒宴にまじわるうちに、まどろんでしまいます。寝込む維茂のもとに山神が現れ、更科姫は実は人食い鬼であると警告して去ります。目覚めた維茂は、鬼女の正体を顕した更科姫に立ち向かい、松の大木の上まで追いつめます。静かな女性の舞いから荒れ狂う鬼女へ。
大役に挑む海老蔵、受けて立つ松緑ともに、初役で勤めます。
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