インタビュー・文 富樫佳織、衣裳写真 松竹衣裳(株)、構成 栄木恵子(編集部)

 日本の春を彩る代表的な花、桜。
 あっという間に満開となり、名残惜しさとともに散っていく美しさに、人は格別の思い入れを込めてきました。

 万葉集にも、桜に思いを馳せた歌がたくさん詠まれています。
「やどにある桜の花は今もかも松風早み地に散るらむ」
松を揺らす強い風が吹いているので、あなたの庭の桜も今頃散ってしまっているのでしょうー
 厚見王(あつみのおおきみ)が久米女郎(くめのいらつめ)に贈った歌は、離れた場所にいながら大切な人を思う気持ちを、散る桜に託しています。

 短い期間しか見ることのできないこの花を、日本人は様々な文様に託して美しさを閉じ込めました。中でも、歌舞伎の舞台を彩る桜は独特の美学を象徴していると言います。
 東京藝術大学先端芸術表現科教授の伊藤俊治さんのご案内で、歌舞伎の演目により深い意味を与える桜文様の効果を解き明かしてみましょう。

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歌舞伎文様考

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