大前髪
おおまえがみ
江戸時代、男たるもの、15~6歳にもなれば前髪を落とし、月代(さかやき)をいれて元服し、おとなの仲間入りをしたことを表明するのが普通です。
しかし、『双蝶々曲輪日記』の濡髪といい放駒といい、『神明恵和合取組・め組の喧嘩』の四つ車や九竜山など、歌舞伎に出てくる角力取りは、思いっきり大きく結った大髻(おおたぶさ)に大前髪という風俗です。
現在の相撲では、故意に相手力士の髷(まげ)をつかんだ場合は反則負けになりますが、江戸時代、まだルールが確立されていなかった頃は、相手の髷をひねったりすることがありました。また相手の腹めがけて、頭から突っ込んでいく"腹くじり"(のちには"前づけ"と呼ばれる)という手がはやったといいます。
が、これを潔しとしない力士は、前髪を残しきれいに結い上げ、"自分は強いのであるから、頭をつかうような卑怯な手は使わないし、相手に髪も触らせない。この結い上げた髪の一筋も乱させるものではない。"という心意気を表したといいます。中には、わざわざ女性と同じく飾り櫛を挿し、これが土俵に落ちることがあったら、その時点で負けとしてよし、とした力士もあったそうです。(み)
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