並木正三 その1
なみきしょうざ その1
『霧太郎天狗酒醼(きりたろうてんぐのさかもり)』の作者である並木正三は、宝暦から安永にかけて上方で活躍した狂言作者で、江戸中期の歌舞伎界を代表する狂言作者です。
享保15年(1730年)に大坂道頓堀で生を受けた正三は、幼名を久太と言い、家業が芝居茶屋であったこともあり、歌舞伎や操り芝居の楽屋を遊び場として、成長しました。そして14,5歳の時には、早くも手妻(てづま)からくりの水船の仕掛けを工夫したと伝えられています。
その後、元服して正三と名乗り、19歳となった寛延元年(1748年)には、泉屋正三の名で、大坂大西の芝居で上演された『鍛冶屋娘手追噂(かじやのむすめておいのうわさ)』の作者のひとりに連なりました。そして翌寛延2年(1749年)には、わずか20歳という若さで、立作者となりました。
順調に歌舞伎の狂言作者としての道を歩んでいた正三ですが、宝暦元年(1751年)に、人形浄瑠璃の作者へと転身し、並木宗輔(千柳)の門弟となり、その名も〝並木正三〟と改めました。宗輔の代表作である『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』をはじめ、『日蓮聖人御法海(にちれんしょうにんみのりのうみ)』などにも、正三は合作者として名を連ねています。
しかし間もなく師である宗輔が逝去したために正三は、歌舞伎の世界へと舞い戻りました。(つづく) (M)
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