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勘九郎、七之助、七緒八、哲之、桃太郎ゆかりの地へ
11月24日(木)、来年の歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」にて『門出二人桃太郎(かどんでふたりももたろう)』で、三代目中村勘太郎を名のる波野七緒八と、二代目中村長三郎を名のる波野哲之が、中村勘九郎、中村七之助とともに、香川県の鬼ヶ島と岡山県の吉備津神社を訪れました。
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勘九郎の長男、七緒八と二男、哲之が最初に向かったのは、桃太郎ゆかりの鬼ヶ島(香川県高松市女木島)です。ここは、父と叔父の七之助が『門出二人桃太郎』で初舞台を勤める折(昭和62年1月)前年の9月に、そして祖父の十八世勘三郎も、『昔噺桃太郎』で初舞台(昭和34年4月)を勤める前に訪れた場所。親子三代にわたり、桃太郎としてこの島にやって来ました。
勇ましく大小二本差しで大洞窟まではやって来ましたが、今にも鬼が出てきそうな洞窟の入り口に立つと、ちょっと尻込み。勘九郎に「せっかく来たのだから」と言われ、ようやく中へ鬼退治に向かうことになりました。
しかし、大人は身をかがめるような洞窟内部も、いざ鬼退治へと突き進む元気な二人の桃太郎にとってはわくわくする空間だったのでしょう、刀を振りかざしながらどんどん進んでいきます。途中、鬼の面をつけて出てきた勘九郎にも勇ましく斬りかかりましたが、勘九郎自身も30年前、父に同じことをされたとき、真っ先に斬りかかっていったとのこと。
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鬼ヶ島から岡山へと移動し、次に訪れたのは岡山市にある吉備津神社。桃太郎伝説の元となったといわれる大吉備津彦命を奉る神社です。本殿で参拝、成功祈願を終え、「桃太郎の力と鬼の力を授かりました」と神主さんからお言葉をいただきました。
さらに、吉備津神社には、鬼の首が埋まっているという御竈殿で行われる、「鳴釜神事」が伝えられており、祖父も父も吉凶占いで初舞台の成功を占い、見事に本番の舞台を勤めた実績があります。巫女さんが釜に乗せたせいろに米を入れると、間もなく唸るような音が長く鳴り響いて吉報が告げられました。
「あとは彼らがしっかり稽古していい舞台を勤めるだけ。稽古させるのは親の責任ですが、しっかり稽古すると思います」と語ったのは勘九郎。先日、七緒八が七五三のお参りで絵馬に「おけいこがんばります」と書いていたと明かし、「それだけの覚悟はあるのかなと思います。それで、…あなたはどうなの」とふられた哲之も「はい」としっかり返事をし、二人とも稽古が楽しみと答えました。
七之助は「思い出がよみがえります。(七緒八と哲之と)同じ年齢でやったので、稽古に入ってみて自分がどういう感情になるのか、楽しみではあります」と感慨深げに話しました。「ご出演くださる方々に感謝しつつ、私たち家族はそれに甘えず、二人ともよく稽古して、しっかりした桃太郎を見せられたら」と七之助が話すと、七緒八も哲之も「かっこいい桃太郎になりたいです」と宣言しました。
「父も、自分たちも、そして今彼らが訪れて…。吉備津神社は父にとってゆかりのある地だと思っているので、父がずっとそばにいてくれているなという思いでいます」と、しみじみと境内を見渡した勘九郎。「今日は集まってくださってありがとうございました」「桃太郎頑張ります。よろしくお願いいたします」と、七緒八と哲之が声をそろえてしっかり挨拶する様子は、来年2月の舞台をますます楽しみにさせました。