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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「十二月大歌舞伎」初日開幕

 

 12月1日(水)、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」が、初日の幕を開けました。

 令和3(2021)年歌舞伎座公演の最後を飾る「十二月大歌舞伎」。今月も歌舞伎座では幕間ありの三部制、客席数50%を維持し、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を徹底して、お客様をお迎えしています。

 

 第一部は、「三代猿之助四十八撰」屈指の人気作を「新版」として上演する『新版 伊達の十役』。猿之助が10役の早替りに挑み、演出も担います。序幕の「奥殿」では、猿之助の乳人政岡が足利家の跡継ぎ鶴千代を守護しています。政岡が鶴千代の毒殺を警戒するなか、中車の栄御前が見舞いの菓子を持参して現れます。すると、危機を察した政岡の息子千松が身代わりとなり、巳之助の八汐によってなぶり殺されてしまい…。幼君のために我が子を犠牲にして忠義を尽くす政岡の力強い姿と、悪人一味の策略が交錯するドラマチックな展開に、観客は一気に引きこまれました。

 

 続く「床下」では、猿之助による松ヶ枝節之助と仁木弾正という、善悪の対照的な役柄の早替りがみどころです。妖しくこぼれる煙とともに登場した弾正の姿が強烈な印象を与えました。大詰の舞踊「間書東路不器用(ちょっとがきあずまのふつつか)」では、猿之助がさらにスピーディーに、華麗に早替りを繰り広げ、客席の熱気も高まります。足利家の忠臣、門之助の渡辺民部之助も登場し、弾正の妖術で大鼠が現れるなどスペクタクルな場面が展開され、惜しみない拍手が送られました。

 

 第二部は、女方舞踊の大曲『京鹿子娘道成寺』を男女で踊る趣向の『男女道成寺』で始まります。鐘の供養のため、奉納の舞を舞う美しい白拍子の花子と桜子。勘九郎の勤める花子は、各地の色里の名を読み込んだ鞠唄に合わせて、艶やかに踊り、観客を引きつけます。尾上右近の勤める桜子は、実は狂言師左近という男性で、3つの面を使って、男女の恋の様子を艶やかに舞います。やがて二人の形相がみるみる変わると…。華やかさのなかにも神秘的な空気が漂い、幕となりました。

 

 続いては、宇野信夫が作・演出を手がけた、昭和26(1951)年初演の新歌舞伎『ぢいさんばあさん』です。勘九郎演じる美濃部伊織と菊之助演じる愛妻るんは評判のおしどり夫婦。幸せに暮らしていた矢先、伊織は義弟に代わり一年間の京都勤めとなりますが…。離れ離れになってた二人が37年後に再会する大詰では、冒頭の若々しい会話から一転、しみじみと語り合う二人の姿が胸を打ちます。無情にも過ぎる歳月の重さと、変わらぬ夫婦愛にあふれる物語に、劇場は温かさに包まれました。

 第三部は、歌舞伎三大名作のひとつ『義経千本桜』の一場面、華やかな舞踊の名作『吉野山』から。舞台中央の浅葱幕が振り落とされると、美しい桜満開の吉野山の景色が広がります。七之助の静御前が麗しい姿をみせると、客席からはため息がもれます。静の鼓の音が響くと、松緑の佐藤忠信の登場です。静と忠信の華やかな連舞、力強い忠信の戦物語など、みどころが続きます。今回登場するのは静御前と忠信の二人のみ。音楽も竹本のみでの上演で、いつもとは趣の異なる雰囲気に包まれ、華麗な二人の道行に客席も華やぎました。

 

 最後は、能の「紅葉狩」を題材とした、『信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)』です。玉三郎の上臈と侍女たちが登場し、能写しの風格のある扮装と舞で、観客を美しい世界へ引き込みます。宴に誘われた七之助の平維茂が酒に酔いまどろむと、松緑の山神が登場し、足を踏み鳴らしこれに警告します。やがて本性を現した六人の鬼女と維茂の激しい立廻りに、観客も息をのみました。幽玄な雰囲気から一転、迫力あふれる舞台に、満場の拍手が送られ幕となりました。

歌舞伎座「十二月大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座木挽町広場では、27日(月)まで「2022干支雑貨フェア」、ご当地の鍋つゆをご紹介する「全国鍋つゆ祭」を開催中。また、19日(日)から27日(月)まで、全国各地のおせち用料理として、「特選おせち料理フェア」が開催されますので、ご観劇の際はぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は、26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/12/03