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南座「吉例顔見世興行」初日の賑わい

 12月2日(木)、南座「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」が、初日を迎えました。

 本年の「吉例顔見世興行」は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、昨年に引き続き三部制で上演します。第一部では坂田藤十郎三回忌追善狂言として、藤十郎ゆかりの演目をご覧いただきます。

 

 第一部の幕開きは、源平時代を背景にした舞踊『晒三番叟』です。源氏の白旗が盗まれたとして、源氏の若武者、佐々木小太郎行氏(虎之介)と、結城三郎貞光(鷹之資)が、箱根権現に現れた怪しい女を詮議します。疑いをかけられた女は、実は平家にゆかりのある如月姫(壱太郎)で、盗んだ白旗を晒に見立て躍動的に踊り始め、最後は軍兵相手に立廻りをも見せ舞い納めます。女方の華やかさが詰まった、魅力あふれる作品をご堪能ください。

 

 続く『曽根崎心中』は、四世藤十郎が生涯においてお初を1400回以上演じ、当り役となった演目です。将来を約束する徳兵衛とお初を、鴈治郎と扇雀がそれぞれ勤めます。醤油屋の手代の徳兵衛は、友人の九平次(亀鶴)に貸した金の返済を求めますが、九平次は身に覚えのない言いがかりをつけられたとして、徳兵衛を衆人環視のなかで罵倒します。友人に裏切られ、町中の人々の信頼を失った徳兵衛は窮地に立たされます。徳兵衛の伯父の久右衛門(梅玉)が九平次の悪事を暴くも、心中を決心した徳兵衛とお初が、手を取り曽根崎の森へ向かう姿は哀しく、心に沁みます。客席からは惜しみない拍手が送られ、追善を冠した狂言にふさわしい幕切れとなりました。

 

 第二部は、『三人吉三巴白浪』より、同じ吉三の名をもつ三人の盗賊が義兄弟の契りを交わす「大川端庚申塚の場」から始まります。お嬢吉三(孝太郎)が100両を奪うと、「月も朧に白魚の…」の名ぜりふを観客に響かせます。お坊吉三(隼人)に呼び止められ、100両を巡って斬り合いを始めますが、そこへ和尚吉三(芝翫)が仲裁に入ります。黙阿弥の美しい七五調のせりふの数々に引き込まれるひと幕となりました。 

 

 二幕目は仁左衛門の山蔭右京、芝翫の奥方玉の井による『身替座禅』。恐妻家で浮気性の右京は、恋人の花子との逢瀬を楽しむため、太郎冠者(隼人)に自分の身替りをさせます。ほろ酔いで帰ってきた右京は浮気の一部始終を語り始めますが、そこにいたのは…。玉の井が鬼の形相で右京を追い回す場面に、客席からも笑いが起こりました。

 

 第三部は仁左衛門の監修による『雁のたより』で、幸四郎が初役の髪結三二五郎七に挑みます。高木蔵之進を錦之助、若旦那金之助を愛之助が勤めます。五郎七は、若殿の愛妾から手紙を届けられ人目を忍んで会いに行きますが、実は偽手紙で、散々な目にあわされます。五郎七の可笑しさや、大阪弁の面白さが詰め込まれた、笑いに富んだ上方狂言で、客席は明るい雰囲気に包まれました。

 

 最後の演目は愛之助が5役を演じる『蜘蛛絲梓弦』。蜘蛛の精が小姓、太鼓持、座頭、傾城に姿を変え、病にかかった源頼光(幸四郎)を狙いに現れます。早替りで次々と繰り広げられる展開に、客席は息つく間もなく引き込まれていきます。鬼気迫る蜘蛛の精が千筋の糸を繰り出し襲いかかるも、それをものともしない頼光らとの立廻りがあり、客席の興奮も冷めやらぬうちに幕となりました。

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 南座「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」は23日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/12/08