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パリ「松竹大歌舞伎」、喝采で迎えられた獅童、七之助
9月13日(木)、パリの国立シャイヨー劇場で「松竹大歌舞伎」の公演が初日を迎え、中村獅童、中村七之助の出演で『色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね』と歌舞伎十八番の内『鳴神』が上演されました。
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日仏友好160年を記念して開催されている、日本の文化をフランスに紹介する「ジャポニスム2018:響きあう魂」において、メイン公演の一つとして、国立シャイヨー劇場の2018-19シーズンオープニングを華々しく飾った「松竹大歌舞伎」。シャイヨー宮で14年ぶり2度目となる歌舞伎公演とあって、開演前の昂揚感あふれる劇場の空気からは、待ちわびたパリの期待の高さが感じられました。
初日前日の12日(水)には最終舞台稽古が始まる前にプレ・レクチャーが行われました。集まったフランスの見学者は報道や演劇の関係者などおよそ500人と、現地での歌舞伎に対する興味の深さがうかがえる盛況ぶり。まず公演団から、野間一平松竹株式会社執行役員が挨拶したのち、この公演で『かさね』の振付にあたった藤間勘十郎が歌舞伎舞踊について、歌舞伎音楽については田中傳左衛門が講師となり、日本を代表する伝統芸能、歌舞伎と公演演目を解説しました。
公演初日の開場前には迫本淳一松竹株式会社社長が傳左衛門へ太鼓の撥を渡し、歌舞伎の伝統行事として公式にはフランスで初となる、「一番太鼓の儀」が執り行われました。傳左衛門による大太鼓は、公演成功の願いとともにシャイヨー宮に大きく響き渡りました。
開演前には皇太子殿下がご来臨。出演の獅童、七之助ほか、関係者の労をねぎらわれたのち、ディディエ・デシャン国立シャイヨー劇場館長の先導で入場され、安藤裕康国際交流基金理事長らと歌舞伎の舞台をご鑑賞されました。
『かさね』は獅童の与右衛門、七之助のかさね、ともに初役。奥女中のかさねが姿を見せた途端、女方の所作の美しさでお客様の目を釘付けにしました。クドキでは与右衛門を相手にかさねが女心を視覚的に表現し、その切ない思いを客席に伝えました。与右衛門の立廻りでは様式美をたっぷりと見せ、醜く変貌したかさねに斬りつけて修羅場となった二人の立廻りでは、連理引きなど歌舞伎ならではの技法も披露、最後まで息をもつかせぬ張りつめた空気が劇場に満ちました。
喝采のうちに幕が降りると、幕間には「ジャポニスム2018」公式企画、「エッフェル塔 特別ライトアップ」点灯式が行われました。皇太子殿下が点灯のボタンを押されると、日本の美を光と音楽で表現する「エッフェル塔 日本の光を纏う」と題されたライトアップがスタート。歌舞伎座のライトアップも手がけた石井幹子さん、石井リーサ明理さんが、プロジェクションマッピングによる日本画も含めて約10分間のショーで、日本の色をパリの夜空に浮かび上がらせました。
次の幕は『鳴神』。獅童の鳴神上人と七之助の雲の絶間姫での上演は初めてです。所化の軽妙なやりとりで和ませ、雨を降らせないほどの力を持つ高僧が、妖しいほどの色香を放つ姫に籠絡されていく様子は、古典歌舞伎らしいおおらかな演技で見た目にも面白く、パリのお客様をぐいぐい引き付けていきます。ぶっ返ってからは柱巻の見得から六方の引込みまで、鳴神上人の見せ場が続き、大きな拍手と歓声が幕が降りた後も長く長く続きました。
パリのお客様に初めてお目見得した二人は、舞台に向けられた真剣な眼差しと喝采とともに迎え入れられ、どの公演もすべて、ほぼ満席という活気あふれる舞台となりました。公演や行事の模様は、ぜひ、動画でご覧ください。