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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」初日開幕
8月9日(木)、歌舞伎座百三十年「八月納涼歌舞伎」が初日の幕を開けました。
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白々と夜が明けても、まだ火が収まらない江戸の町。大地震の出火を逃れてきた吉原の女郎お蝶と、猿若町の大部屋役者の幸太郎、運命的な出会いから始まる『花魁草』。互いに思いを寄せあいながらも、一歩踏み込むことができないという微妙な関係を、二人が舞台に醸し出します。というのも、10も年上のお蝶には人に言えない過去があり、素直に幸太郎の胸に飛び込めないでいるのです。幸太郎が役者として花開かせ、幸太郎の植えた花魁草も見事な花を咲かせたとき、お蝶は…。北條秀司が初めて七世梅幸を主役に書き下ろした作品です。
歌舞伎座での襲名披露から半年ぶりに、幸四郎と染五郎が舞台に顔をそろえた『龍虎』。振付は十世三津五郎。天の龍と地の虎が義太夫に合わせ、対決するかのように力強く踊ります。岩山を縦横無尽に駆け回る龍と虎。さまざまな毛振りの形を見せながらの引抜きもあり、龍と虎は互いに負けじと猛々しく踊ります。舞台に張りつめた緊張感は最後まで途切れることなく、冷たい月が照らし出す龍と虎に、幕が降りると同時に大きな拍手が送られました。
第一部の切は新作歌舞伎『心中月夜星野屋』で大笑いです。金に細かくて芝居が大好き、虫の好かない人と言われているのが、青物問屋星野屋の照蔵。中車が算盤をはじきながらの登場です。囲われ者のおたかは七之助、野菜づくしのせりふで照蔵が持ちかけた別れ話も、芝居だと思って話を合わせています。照蔵が本気とわかってびっくり、ですが、獅童の演じるおたかの母、お熊も娘に負けずかなりのしたたか者で…。照蔵おたかの芝居がかったやりとりもお見逃しなく。
第二部は3年目の『東海道中膝栗毛』です。幕開き早々、喜多八の葬儀で弥次郎兵衛が号泣、しかし、たとえ一人死んだからといって終わるようなやじきた道中ではありません。いつまでも嘆くばかりの幸四郎の弥次さんに、あきれる染五郎の梵太郎と團子の政之助。あいかわらずしっかり者の二人が、思い出のお伊勢参りをしようと弥次さんにもちかけ、死んでもただでは起きない猿之助の喜多さんもついていきます。
獅童、七之助、中車の三人はそろって何役も目まぐるしく早替りをし、花魁道中あり、総勢40名以上のだんまりあり、閻魔庁では若手が踊りの腕を披露、四人の宙乗りもあって今年もやっぱり盛りだくさん、舞台の隅から隅までお楽しみください。
続いては、歌舞伎の本興行では初上演の『雨乞其角(あまごいきかく)』。扇雀が其角、大尽は彌十郎で、舟遊びなど江戸の風情たっぷりの一曲です。「夕立や 田を三囲の 神ならば」の句で、雲さえ湧かぬ日照り空から恵みの雨が降り、弟子たちは大喜び。若手がそろっての総踊りで第二部が幕を降ろします。
第三部は、五世幸四郎が初演し、当代幸四郎が9年ぶりに勤める源五兵衛、七之助の小万と獅童の三五郎は初役という『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』の通し上演です。三五郎と小万は幕開きから終始一貫、見ているほうが目を覆うほどの仲のよさ。小万は芸者に出るのも入れ黒子の痛みを我慢するのも、すべて三五郎のためといういじらしさです。その三五郎には、旧主のために金を用立てようとする父に、報いたい一心で悪事にも手を染めてしまう忠心があります。
そして、源五兵衛。大望をかなえるための百両を小万たちに騙し取られ、武士としての自尊心が傷ついた瞬間、憎悪の炎が燃え上がります。三人のドラマを核にして、思わず吹き出す滑稽な場もあり、身の毛のよだつ殺し場もあり、背筋の凍る瞬間もあり。特に、源五兵衛が一人ひとり手をかけていく場面は、どこを切り取っても絵になる美しさです。幕切れの演出にもご注目。切り口上で幕が降りたときには、すっかりこの夏の暑さが吹き飛んでいました。
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猛暑続きの8月ですが、歌舞伎座地下2階木挽町広場は夏を満喫していただこうと、夏祭りの賑わいと見た目にも涼しい商品を並べてお客様をお迎えしています。
歌舞伎座百三十年「八月納涼歌舞伎」は、8月27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹で販売中です。