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隼人が「京都×歌舞伎 トークイベント」に登場
3月5日(月)に開催された「京都×歌舞伎 トークイベント in 歌舞伎座ギャラリー」に、中村隼人が登場しました。
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東京で京都を見つける京都創生PR事業として、2011年に始まった「京あるき in 東京」。8年目を迎えた今年は「京まなび」と題し、2月3日(土)から3月11日(日)まで、大小合わせて100近い催しが行われます。
そのなかで、歌舞伎座ギャラリーで開催されたこのトークイベントは、東京駅八重洲口再開発事業にともない閉館する京都館を、新たにスタートさせるにあたっての「京都館プロジェクト2020リーディング事業」の第一弾として行われました。放送作家で京都館館長の小山薫堂氏と、漆工芸家の三木啓樂氏とともに登壇したのが隼人です。
人々をひきつける京都の魅力
前日に仕事で京都にいた隼人は、外国人観光客の多い京都駅で、「日本人が興味を持つ以上に、海外の方が京都に興味を持っていると感じました」。率直な感想とともに、「京都には、よくこういうものを思いつくな、というものが多いですね」と言うと、「たしかに。京都では昔からあるものと同時に、それを打破しよう、普通にそこにあるなら、そうでないものを求めようとするところがあります」と三木氏が返しました。
小山氏は京都でプロデュースしているブランドを例に挙げ、「新しいものを出すのに、時間をかけ、使い方をフィードバックさせたうえで出しますよね」と言うと、漆工芸という伝統産業に身を置く三木氏は、「漆器はつくったら1年置く。漆に日本の四季を味あわせ、落ち着かせる。安心してお渡しできるものをつくります。また、京都は分業でものをつくるところに基本がありましたが、今はすべての工程を自分でできるようにして、できるところを分業にする。作家と分業制が混在する伝統産業になっています」と説明しました。
「京都では同じものをつくり続けるとだいたい4代でだめになるんです。長く続いているところは、伝統伝承の真髄を持っているとともに、この代のものだとわかる、特徴のある仕事を心がけなさい、といわれるそうです。各代の特徴があり、かつ、通っているものがあるんです」という話を披露すると、隼人も歌舞伎に寄せて、「筋を通しながら、新しいジャンルに挑戦し、次の時代にはまたその時代に合わせたものをつくる。古典の筋を通しつつ、新しいものをやっていくことで、本当の意味の伝統、伝承になるんでしょうね」と語りました。
歌舞伎と日本の工芸の深いつながり
新しい挑戦は賛否両論を生むとの話から、歌舞伎の特徴を問われた隼人は、一つの考えとして、「ほとんど奥行きを使わないことが挙げられると思います。奥行きを使うと絵面でなくなってしまう。立体的な舞台では歌舞伎独特の衣裳、着物が映えなくなるからでは」と述べると、三木氏が「工芸のデザインも日本は平面的です。文様化、記号化して頭の中の記憶の風景を呼び起こすことが多い」と続け、日本の伝統の共通点も浮かんできました。
「歌舞伎が日本文化を学ぶきっかけになりそうですね」と小山氏が振ると、「たとえば、歌舞伎では音楽も日本のトップの人たちが集まってつくり、生演奏で提供しています。そこから楽器、歌とどんどん興味が広がっていくとうれしいです。そんなところにも歌舞伎の魅力が詰まっていますから」と、隼人は笑顔で返しました。
『女暫』の茶後見で持った茶器が、特注で高価なものと聞いた途端、手が震えた話や、印籠や数珠、踊りの中啓といった「俳優自身の持ち物も多い」小道具の話など、隼人が明かしたエピソードの数々に小山氏も、「一つの作品にいろんな人の思い、努力が詰まっていると思うと見え方も変わってきます」と、興味を掻き立てられたようです。
伝統と革新
小山氏からは、京都の料亭を引き継ぐことになったとき、「伝統は革新の連続だと、茶道のお家元もおっしゃっている、あなたも新しいことをしなさいと言われました」との話も出ました。それに対し、『ワンピース』『NARUTO -ナルト-』と新作歌舞伎に出演する隼人は、「歌舞伎の伝統は、先人たちがやってきたことを繰り返し上演することで守るのが根本」と言いつつ、「その時代に流行っているものをとり入れ、残ってきたものも歌舞伎」と続けました。
「古いものを守りながら新しいものを創造していくことで、またそれが伝統になっていく」と、歌舞伎の伝統を語ったうえで隼人は、「歌舞伎には今の感覚と違うところもあって難しいという声もあるけれど、今とは感覚が違う時代があった、ということを頭に置いてもらえればと思います。外国の映画だって文化や背景が違うとわかったうえで、作品に感動するわけですから」と、観劇を楽しむためのアドバイスも付け加えました。
三人はそれぞれの分野の話を持ち出しながら共感したり、違いを認識しながらトークを展開。最後に、「こういうふうにコミュニケーションを図りながら、10年後、20年後の日本の伝統が進化し、新しく生まれ、継続していくのではないでしょうか」と三木氏が締めくくり、刺激的な出会いとなった一夜に、お客様も満足のご様子で会場をあとにされました。