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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」高麗屋三代襲名開幕

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」高麗屋三代襲名開幕

 

 

 1月2日(火)、歌舞伎座百三十年「壽 初春大歌舞伎」が初日の幕を開け、幸四郎改め二代目松本白鸚、染五郎改め十代目松本幸四郎、金太郎改め八代目市川染五郎、高麗屋三代の襲名披露公演が始まりました。

 開場130年目を迎えた歌舞伎座は、『箱根霊験誓仇討』で幕を開けました。昭和53(1978)年に初代白鸚(当時 八代目幸四郎)が滝口上野と筆助を演じた、仇討ち狂言です。今回はその2役を愛之助が勤めます。勘九郎の勝五郎、七之助の初花夫婦が兄の敵を討つためにやってきた箱根で出会ったのが上野。横恋慕した上野は、初花をさらってしまいます。病身の勝五郎の二枚目ぶり、初花の美しい貞女ぶり、極悪非道な上野の凄みと、歌舞伎味をたっぷり見せながら笑いも入れ込んで、最後に奇跡を起こします。

 

 続く『七福神』では、ちはやぶる神の恵みをありがたく…と始まった舞台に、富士山を背にした宝船が七福神を乗せてきました。毘沙門と弁財天の舞を皮切りに、神々が酒を楽しんだり、恋の手習いの艶っぽい踊りを見せたりと、七人の神様が新年を寿ぎ、襲名披露で開幕した節目の歌舞伎座にふさわしく、おめでたいひと幕を見せました。

 

 『車引』。祝い幕が開き、勘九郎の梅王丸と七之助の桜丸が、主人の乗る牛車に立ち向かってきたところへ現れたのが、板鬢に二本隈の染五郎改め十代目幸四郎の松王丸です。「待てぇ」と場内を圧倒するかのようなエネルギーを放っての登場に、「高麗屋!」の声が飛び交い、万雷の拍手が起こりました。父の新白鸚が幾度となく勤めた役で、自身も5度目。鼻高幸四郎とも呼ばれた五代目を彷彿とさせる横見得、化粧声が引き立てる元禄見得に大きな拍手が沸き上がりました。

 

 続いて『寺子屋』。柝が入った途端に「二代目!」の声がかかりました。猿之助がやんちゃな涎くりで舞台に復帰、温かい拍手で迎えられたあと、梅玉の源蔵、雀右衛門の戸浪が菅秀才のため、身替りの首を差出す決死の覚悟をみせます。そこへ、首実検のためにやってきたのが松王丸。「お待ちなされ」の声が響くや否や、姿を現すのが待ちきれないかのように拍手が起こりました。幸四郎改め二代目白鸚、お馴染みの雪持ちの松の衣裳が、ひときわ鮮やかに見えます。37年前の九代目幸四郎襲名披露でも勤めた高麗屋の当り役に、新たに白鸚の名を刻みました。

 夜の部は『角力場』から。芝翫の濡髪と愛之助の放駒。愛之助は与五郎では柔らかい上方の味わいを見せ、一本気の放駒との違いを際立たせました。芝翫となって初めての濡髪にはいっそう風格が漂い、懐の深さを感じさせます。活気あふれるひと幕で景気づけ、夜の部も賑やかに開けました。

 

 祝幕が開いた舞台にずらり並んだ22人の歌舞伎俳優。壮観な眺めにどよめきが起き、喝采が長く長く続くなか、『襲名披露口上』が始まりました。藤十郎の紹介を受けた白鸚が最初に名のりを上げ、「三人そろってのご披露がこのように再び盛大に行われますこと、私はもとより、泉下の父もさぞ喜んでいることと存じます。これもひとえにご列座の皆様、関係各位、とりわけ客席の皆様方のご贔屓の賜物と厚く厚く御礼を申し上げまする次第に存じます」と、ゆっくりと場内の隅々まで見渡すように礼を述べました。

 

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」高麗屋三代襲名開幕

 高麗屋の四ツ花菱に、白鸚と幸四郎の浮線蝶、染五郎の三ツ銀杏の紋が、寄り添うように描かれた祝幕。写真の箱は2階ロビーでご覧になれます

 幸四郎は歌舞伎座百三十年という節目での襲名披露に感謝し、「私、まだ芸道未熟、不鍛錬ではございまするが、自分の勤めております歌舞伎が、歌舞伎のための力となることを信じまして、天に向かって舞台に立ち続ける所存にござりまする」と力強く宣言。染五郎は「『勧進帳』の義経という身に余る大役を勤められますること、このうえない喜びにござります。こののちはなおいっそう芸道に精進いたしまする」とまっすぐな眼差しで語り、三人がご贔屓、ご支援を願って客席から熱い拍手を浴びました。

 

 そして『勧進帳』。弁慶に憧れ続け、平成26(2014)年に41歳で初役を勤めた染五郎が、幸四郎となり、再び弁慶に挑みます。相対する富樫は吉右衛門。弁慶たちが守る義経に、金太郎改め八代目染五郎。前回の父の弁慶では太刀持を勤めていましたが、今回は、弁慶の心中を察して手を差し出す義経という大役に初挑戦です。顔を上げた義経の凛々しさに一段と大きな拍手が贈られ、幕外の弁慶には「おめでとう!」の声も飛び、豪快にして華麗なる弁慶の飛び六方の引込みに拍手が鳴りやみませんでした。

 

 1月の襲名披露を締めくくるのは舞踊2題。扇雀と孝太郎、女方二人の艶やかな獅子の舞が、古風な味わいを残す『相生獅子』。続く『三人形』は、豪奢な傾城の雀右衛門、丹前六方で見せる若衆の鴈治郎、二人を軽妙な振りで盛り立てる奴の又五郎と、観ているだけで自然と笑顔になってしまうひとときを堪能して幕となります。

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」高麗屋三代襲名開幕

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」高麗屋三代襲名開幕

 新年と襲名に歌舞伎座百三十年、おめでたづくしの「壽 初春大歌舞伎」。松飾りや繭玉、大凧、大きな鏡餅と、正月歌舞伎の風情たっぷりでお客様をお迎えしています。劇場をあとにするときには、つい“コリャイイや、こうらいや”のひと言が口をついて出てしまうことでしょう。

 

 歌舞伎座百三十年「壽 初春大歌舞伎」は1月26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

 
歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」高麗屋三代襲名開幕

 地下鉄直結のエスカレーター地上口では、ご来場のお客様を「口上」写真がお出迎え。ここも記念撮影スポットです!

2018/01/03