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鷹之資、玉太郎、梅丸「若手舞踊公演SUGATA」に向けて
3月23日(木)から4日間行われる、KAAT神奈川芸術劇場「若手舞踊公演SUGATA『続・新説西遊記』」に出演の中村鷹之資、中村玉太郎、中村梅丸と、作・演出・振付・出演の藤間勘十郎が、公演について語りました。
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素踊りをベースに
歌舞伎の手法を用いた新作
歌舞伎では子役から大人の役の間で、役が少なく出番も限られてくる年代の鷹之資、玉太郎を中心に、昨年から梅丸も加わった、KAAT 若手舞踊公演「SUGATA」。若手歌舞伎俳優の今の“姿”を見ていただき、先輩俳優の“姿”を追いかけてもらおうというこの公演で、昨年の新作「新説西遊記」の好評を得て、3回目となる今年はその続編が新たにつくられます。
劇場のKAATが中華街に近いこともあって選ばれた『西遊記』の世界は、古典ながらもいろいろなことができると勘十郎は言います。「序幕は舞踊劇、二幕目は『宇和島騒動』をとり入れて義太夫狂言を意識したものにし、大喜利所作事として、『双面』と『道成寺』のないまぜにしたような踊り、という構成です。序幕は梅丸さんと私がいっぱい踊り、義太夫部分は鷹之資さん、玉太郎さんに大きく比重がかかります。立廻りもふんだんにあり、長唄に乗った所作事もあり…」と、さまざまな要素にあふれる新作です。
再び猪八戒、沙悟浄、そして孫悟空に
三人はそれぞれ昨年と同じ役を勤めます。鷹之資は親近感を抱いているという猪八戒。「頼りなさがあって真面目だけれどおっちょこちょい。まさしく僕だなと。愛嬌があってマイペースですが、役の魅力を出して可愛らしく、愛らしいイメージにしたいです。ずっとそういう気持ちでいないと、自分に戻ってしまう瞬間があると面白くなくなってしまいます。役になって猪八戒らしさを出すところが、やはり難しかったです」。食べることと女の子のことで頭がいっぱいな猪八戒を、せりふと所作で表現します。
三人のなかでは一番のしっかり者でインテリ派の立場になる沙悟浄には玉太郎。「河童というと不気味で恐ろしいイメージがありますが、沙悟浄は見かけ倒し、そんなところも自分に似ているのかな」と分析しつつ、「きゅうりに目がなかったり、お茶目な部分もあるので、そういうところも出せたらいいなと思います。きまりの形など、形になったなと思っていても、満足するとそこで終わってしまうので、もっと上にという目線でやりたいと思っています」と、向上心を忘れません。
孫悟空にぴったりと抜擢された梅丸、「昨年、まさか本当に金髪にするとは」と言いつつ、今年も金髪を輝かせる予定です。「悟空は出る場面によりキャラクターが変わるので、演出に負けると一貫性がなくなってしまいます。女方から孫悟空に変わるところも難しかったです。なり(格好)に頼りました」と語り、2回目となる今回はさらに役を深めていくと意欲を見せました。歌舞伎座との掛け持ち出演での奮闘で、「金髪で歌舞伎座に通うのが…」と苦笑しつつも楽しそうです。
お客様との距離感の近さもお楽しみの一つ
今回、新たな演出として、幕開きに鷹之資と玉太郎が交互出演で、作品の全貌を解説する「口上」を勤めます。「自分がどういう作品に関わっているかわかっていないとできません。鷹之資、玉太郎という役として歌舞伎の口上を述べ、瞬時に猪八戒、沙悟浄の役に変わる。2役を演じるくらいの気持ちでないと」と、演出する勘十郎が期待をかけます。二人には歌舞伎俳優として義太夫狂言の芝居、そして口上と、2つの大きな挑戦の場が設けられました。
KAATでの公演は客席との距離が近く、「花道で上から見るより、お客様を横に見る感じ」(鷹之資)になります。「お客様のほうも芝居の世界に入ったと錯覚するくらい」(玉太郎)アットホームな雰囲気になりますが、「劇場の大きさに合わせて芝居をする力はまだありませんので、歌舞伎座でするつもりで臨みます」(梅丸)。お客様のダイレクトな反応を感じながら、よりよいものを探っていけるのも、この公演ならではです。
「歌舞伎ファンばかりがいらっしゃる劇場ではないので、いろいろな人が楽しんで、それで歌舞伎に来てくださるようになればなにより」と勘十郎。勘十郎自身も出演者の一人として出演しますが、「私も遠慮しません。皆が主役と思って負けないぞとやってくれればいい」。三人が主役の心で立つ「SUGATA」、3月23日(木)から4回公演です。