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新悟が「歌舞伎夜話」で明かしたあの役、この役
7月14日(木)、歌舞伎座ギャラリーで開かれた、「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」に、坂東新悟が登場しました。
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すらっとした新悟がジャケット姿で現れると、『寺子屋』の暖簾口が小さく見えます。「父(彌十郎)のほうが(背が)大きいです」と断りを入れながら着席して、夜話がスタートしました。「背が高いのは女方にとってのハンデ、でも、立役としては線が細すぎる。どちらを選んでも、課題に対しどう克服するかは同じ」と語った新悟ですが、はっきり女方として歩むことに決めたのは、学校を卒業する頃だったそうです。
背が高いことを意識するあまり、「腰を落とすことを強く意識しないほうがよいと言われました。重心をしっかり決めるため、ある程度は落さないといけませんが、必要以上に腰を落とすと、頑張って小さくしているんだなと逆に目立ってしまうんです」。何人もの女方の先輩俳優から同じ話をされ、課題の克服に日々取り組んでいます。
コクーン歌舞伎では、稽古でいろいろな演技を試させる演出家のもと、「毎日、悩みながらやるうち、芝居は自分一人でつくるものじゃないなと、すごく勉強になりました。コクーン歌舞伎に出るたび、普段の不勉強を感じます」。そんな苦闘の稽古が、歌舞伎NEXT『阿弖流為』の阿毛斗役につながっていきます。「自然な芝居を心がけ、変につくったりせず稽古するなかで、中性的な路線がいいなと見つけました。声も太めのトーンにして」、歌舞伎にはない、けれども歌舞伎俳優でないとできない人物をつくり上げました。
『阿弖流為』の阿毛斗は歌舞伎の台本どおりに役をつくったのですが、劇団☆新感線版の阿毛斗は、「ギャグ好きで歌舞伎とは180度違います」。リスペクトがあったので、蛮甲がシャケを投げる場面で、一日だけ、ギャグ好きな阿毛斗になりきったという話では、照れながらの貴重なシーンの再現で会場は大爆笑でした。
今年2月、歌舞伎座の『籠釣瓶花街酔醒』では七越を勤めました。八ツ橋の愛想尽かしについて、リアルな反応をしても邪魔になるし、まったく反応せずに他人事でもいけない。「ただ、お芝居の中に、居るだけでも難しいお役ですが、コクーン歌舞伎などの経験が活きた」とのこと。
そしてこの5月は、ヨーロッパ3都市で公演、彌十郎と『お祭り』『積恋雪関扉』に出演しました。「水を打ったように集中して見てくださって、終わった途端に感動が爆発する。特にスペインは30数年ぶりの歌舞伎公演らしく、熱狂、でした。うれしかったし責任も感じました」。丸暗記したというスペイン語の口上も披露して、木挽町の会場も熱狂。「父は公演後に一人残って山歩き。父くらいの年齢になれば休暇も満喫できますが、我々は休みのときこそ勝負ですから」と語り、新悟の性根が垣間見えたところでお開きとなりました。