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渋谷・コクーン歌舞伎『四谷怪談』熱気あふれた開幕初日
6月6日(月)、東京 Bunkamuraシアターコクーンで、渋谷・コクーン歌舞伎 第十五弾『四谷怪談』が初日の幕を開けました。
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2年ぶりの渋谷・コクーン歌舞伎は『四谷怪談』。平成6(1994)年の第一弾の上演作品であり、10年前には[南番][北番]の2つの演出で再演、そして今回が3度目の上演です。幕開きは、これまでの『四谷怪談』では見たこともない風景から始まります。演出家、串田和美が目の前に広げて見せる混沌の世界、その脳内迷宮のイメージから「浅草観音額堂の場」へと進み、いよいよお馴染みの『四谷怪談』の登場人物たちが動き始めます。
序幕の「浅草観音裏田圃の場」。常からお袖(七之助)に言い寄っていた直助(勘九郎)は、按摩の宅悦(亀蔵)が営む地獄宿にお袖が出ていると聞いて出かけますが、お袖の夫、与茂七(扇雀)が現れて直助は蚊帳の外。一方、伊右衛門(獅童)は女房のお岩(扇雀)との復縁をきっぱり断った舅の四谷左門を憎んでいます。直助が与茂七を、伊右衛門は左門を手にかけたのが、浅草観音裏の田圃でした。
二つの殺人現場へやってきてしまったお岩とお袖の姉妹に、自分たちが仇であるにもかかわらず仇討ちの助太刀を申し出て、伊右衛門はお岩と復縁し、直助もお袖と夫婦の形をとることになります。伊右衛門と直助の思惑が交錯し、お岩とお袖の運命が転換するこの場面は物語が大きく動き出す重要な場。それが、舞台装置をうまく使った演出で、わかりやすくスピーディーに展開します。
演出にあたり串田は、『四谷怪談』を読んでいくと、普段の上演では取り上げられない話にも面白いところがいくつもあったと言います。「直助とお袖の三角屋敷もそうだし、小汐田又之丞のこともそう。小仏小平がなぜ薬を盗み、捕まって殺され、亡霊になってまでも“薬くだせえ”と言っているのか。主人である塩谷浪人の小汐田の足を治し、仇討ちに加わらせたいという思いからなんですね」。二幕目の「小仏小平住居の場」に登場する小汐田は、歌舞伎の舞台に初挑戦する首藤康之が演じます。
あまり上演されることない小汐田のエピソードは、歌舞伎俳優とは異なる独特の存在感もあり、短い登場場面ながらしっかりと人物を印象付けます。また、この場があることで、小仏小平(国生)の存在もクローズアップされます。小平といえば戸板返しの仕掛けが思い浮かびますが、今回の上演では、「名前のついた歌舞伎の仕掛けはほぼ入っていません」と串田。歌舞伎が磨き上げてきた仕掛けに頼らず、たとえば、小平の思いを新たな演出と効果で描き出すことで恐怖を鮮明にしています。
「怪談とはなんなのか。人は生きていく以上、いい人、悪い人の両方の要因を持っている。伊右衛門は刀で人を斬るからわかりやすいけれど、誰もが見えない刀で人を斬っているかもしれないし、人から呪われているかもしれない」と、串田は言います。伊右衛門の頭の中に渦巻く迷いや恐れ、それでも生きようとする思いこそが、どんなに目まぐるしく時代が変わろうとも、変わらずにあることではないのか、と。その集大成ともとれるのが、二幕目「夢の場」です。
さまざまな人がさまざまな速度で行き交い、すれ違い、話し、騒ぎ、通り過ぎていきます。耳に飛び込む音もさまざま。そこに現れた伊右衛門が…。客席にいながら伊右衛門とともに、鮮烈な視覚と聴覚のラビリンスに迷い込み、見たことのない『四谷怪談』の世界を体験することになるでしょう。暗転で幕となり、劇場はほんの少し現実の世界に戻る時間をおいて、大きな拍手に包まれました。カーテンコールに応えて最後に扇雀が、「勘三郎さんが始めたコクーン歌舞伎、千穐楽まで頑張ってまいります!」と挨拶し、熱気冷めやらぬまま初日の舞台は幕を閉じました。
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渋谷・コクーン歌舞伎 第十五弾『四谷怪談』は、6月6日(月)から29日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹、Bunkamuraほかで販売中です。当日券の詳細は公演情報の料金欄をご覧ください。