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京妙、京蔵、京紫が明かした「京屋の秘密」
2月27日(土)、歌舞伎座ギャラリーで行われた「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話 第12回『京屋の秘密』」に、中村京妙、中村京蔵、中村京紫が登場、五代目中村雀右衛門の誕生を前にさまざまな思いを語りました。
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四世雀右衛門に魅せられて
三人はともに舞台の四世雀右衛門にひと目惚れ、歌舞伎の道を選んで、歌舞伎俳優研修を修了すると迷わず弟子入りしました。肉眼で初めて観たのは、襲名披露(昭和39年9月歌舞伎座)の『妹背山』「御殿」のお三輪と言う京妙は、「その美しさ、やわらかさ。優しげで、華のある、牡丹の花のような女方」と、完全にノックアウト状態に。
弟子となってからも三人はやはり、雀右衛門の芸に対する姿勢に魅かれ続けました。「美的感覚が素晴しかった。独特の美意識を持っていた」「小道具でも、化粧でもなんでも大事に芝居をしていた」「スタッフをとても大切にする。どの人にも同じように接していた」「弟子にも意見を聞いてくれ、取り入れてくれた」と、お弟子さんならではの、雀右衛門の素顔が垣間見られる素敵なエピソードも…。
素晴しい教え、思い出を胸に
女方として常に立役を立てる日頃の姿勢が、舞台での愛らしさにつながっていたとも言います。「それが、相手役さんから可愛らしいと思ってもらえるのだなと思いました」と、三人がうなずき合い、「女方としての姿勢を学びました」、と京妙。九州在住だった京紫は入門前、巡業公演(昭和57年9月)の『弁慶上使』のおわさで、「所作に感動して」、以来、雀右衛門の名前が頭から離れなくなっていたそうです。
そして、弟子にしか見せない素顔や、今でこそ笑える失敗談の数々も披露され、会場は大いに盛り上がりました。それでも師匠、四世中村雀右衛門を尊敬し、また愛している気持ちがひしひしと伝わり、雀右衛門の好人物が浮かんできます。誰からも愛され、誰のことも愛した雀右衛門――。
新しい雀右衛門誕生を喜び、期待を寄せる三人
来月の襲名披露狂言『金閣寺』は、四世の雪姫を支えてきた三人にとっては、思い出あふれる演目です。京蔵には、雪姫を縛る縄の苦い思い出があります。「仕掛けの縄が切れて、それはもう怒られました」。四世襲名披露でお祝いの“豪雪”のような桜吹雪が気に入り、以来、いつも大量の桜が降りました。「お葬式も大雪だったし」と、京妙が懐かしむと、お客様もうなずいていらっしゃいました。
あと数日で、新しい雀右衛門が誕生します。「名前は継ぐものですから、大きな雀右衛門さんになっていただきたいと思います」(京妙)、「こんなに早く雀右衛門の名前が復活、うれしいです」(京蔵)、「五代目と言えば雀右衛門、となるくらい、お客様に見ていただきたい」(京紫)と、雀右衛門襲名を喜び、襲名興行では多くのお客様に1回と言わず、何度も足をお運びいただきたいと、京屋の一員として全力で臨む意気込みを語りました。
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中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露は、3月3日(木)に歌舞伎座「三月大歌舞伎」で幕を開け、6月博多座、7月大阪松竹座、そして全国公演へと続きます。ぜひ、劇場へ足をお運びください。