新橋演舞場『阿弖流為』初日開幕
7月5日(日)、新橋演舞場で、歌舞伎NEXT『阿弖流為(あてるい)』が公演初日を迎えました。
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スピード感あふれる立廻り、アクション映画のような激しい剣さばきを見せながらも、ぴたっと美しい形を決めるのが、阿弖流為(染五郎)、坂上田村麻呂(勘九郎)、鈴鹿(七之助)。蝦夷があがめる荒覇吐(あらはばき)の神に背いてまで、運命を共にしようと誓った阿弖流為と鈴鹿の再会、そして“北の狼”と“都の虎”と名のる二人、阿弖流為と田村麻呂の運命の出会いから、物語は始まります。
阿弖流為が、田村麻呂が駆け抜ける!
日の国を手中に収めようとする都の帝人軍の蝦夷征伐は、蝦夷軍の必死の抵抗でいつ終わるとも知れぬ戦いになり、兵士たちが疲れて士気の下がるのを恐れる右大臣藤原稀継(彌十郎)は、人望の厚い田村麻呂を征夷大将軍に任命します。帝の言葉を告げる巫女、御霊御前(萬次郎)も、弟の田村麻呂を誇りに思うと言うのですが、田村麻呂はどこか違和感を持っている様子…。
戦いが続く中、ある出来事をきっかけに、互いを認め合う北の狼と都の虎、しかし、いずれ正面からぶつかり合うことは避けられません。運命を悟った二人がそれぞれに我が道を行くシーンが、両花道を使って象徴的に表現されます。
共感しやすい登場人物
強欲な貴人で小賢しく立ち回る無碍随鏡(宗之助)、策を弄し、武人にあるまじき行為と言われようと勝利にこだわる佐渡馬黒縄(橘太郎)といった憎々しい人物も登場しますが、戦場にあって生き抜くためには裏切りも辞さず、したたかに生きる蛮甲(亀蔵)をはじめ、『阿弖流為』では、善悪をはっきりさせることのできないリアルな人物が描き出されます。
それは、阿弖流為も同じ。神を裏切り、神に呪われた存在として一度は蝦夷に拒絶され、蝦夷の長となってからは戦いを先導しながらも、田村麻呂との対峙を避けられず、戦いをやめられないことに苦悩します。田村麻呂も帝のため、都のためと言いながらも、裏切りと謀略の渦巻く戦いに怒りを隠せず、信じるものが失われていく中で自分を見失いそうになりますが…。
歌舞伎のNEXTステージが誕生
現代人が共感しやすいリアリティーのある物語を、日の国や神と人といった大きな舞台背景で成り立たせてしまうのが歌舞伎。
物語に合わせて舞台がテンポよく転換し、わかりやすい現代語のせりふに、柝やツケの歌舞伎の演出がぴったりはまり、メリハリのある芝居は時間の長さを感じさせません。黒御簾から聞こえるパーカッションも印象的で、いのうえ演出でおなじみの音楽や照明は、この『阿弖流為』でも大きな効果を上げており、また、中島かずきならではの印象的なせりふの数々は、心に深く響きます。
まさに、“歌舞伎NEXT”の誕生を目の当たりにした客席は、最後のカーテンコールでスタンディングオベーションとなり、盛大なる喝采のうちに初日の幕が下りました。2015年に誕生した新しい歌舞伎、「歌舞伎NEXT」と冠した『阿弖流為』、ぜひ劇場でご覧ください。
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新橋演舞場 歌舞伎NEXT『阿弖流為』は、27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹にて販売中です。