「平成中村座 陽春大歌舞伎」初日の賑わい
4月1日(水)、浅草寺境内で 「平成中村座 陽春大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
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春の陽気に誘われて国内外の観光客であふれかえる浅草。雷門から仲見世通りを抜け、浅草寺の向かって左手奥に入り口を構えるのが、今回の平成中村座です。恒例の一番太鼓で開場し、中村座の定式幕が引かれると、満席となった客席からは「待ってました!」の声も上がりました。
幕開きは『角力場』。彌十郎の濡髪と獅童の放駒、相撲取りの二人が平成中村座の舞台に現れると、一気に江戸の芝居小屋の風情となり、客席も熱気を帯びてきます。
続く『勧進帳』では、勘九郎が初役の富樫で厳かに舞台に登場し、七之助の義経が花道でお客様の視線を一身に集めます。橋之助の弁慶の引込みでは、弁慶の豪快な飛び六方とお客様の拍手で、劇場も揺れんばかりに盛り上がりました。
昼の部の切は、勘九郎が念願だった宗五郎を勤める『魚屋宗五郎』。酒がこぼれないようにとしっかり手に握られているのは、十八世勘三郎が使っていた湯呑です。初日のおなぎは新悟が勤め、茶屋娘おしげの児太郎と18日からは役が入れ替わります。
夜の部は、十八世がもう一度やりたかったというお三輪を七之助が勤める『三笠山御殿』から始まります。ここで、勘九郎の豆腐買のおむらに手を引かれて七緒八が、“なおや”の音を入れ替えた役名、“お柳(おやな)”で平成中村座初御目見得を果たすと、客席からはしきりに「かわいい」の声が…。お柳がおむらに向かって、劇場外まで響きそうな声で「中村屋!」とせりふを聞かせると、大向うのかけ声も聞こえないほどの拍手が沸きました。
『高坏』は数々の次郎冠者と太郎冠者の名コンビが生まれた人気の舞踊、今回は勘九郎を相手に鶴松が太郎冠者を勤め、亀蔵の大名某、国生の高足売と、四人が息もぴったりな一幕となりました。
歌詞の「桜の名所嵐山…」ではありませんが、背景が開いて満開の夜桜を背景に次郎冠者が足拍子も軽やかに踊り出すと、花冷えどころか場内はますますの盛り上がりを見せ、手拍子まで起こりました。
切狂言は『幡随長兵衛』。劇中劇の「金平法問諍(きんぴらほうもんあらそい)」の一場がぴったりくる平成中村座で、お客様もすっかり芝居の中にとけ込んでいます。そこへ、芝居見物をしていた白柄組の二人が声をかけますが、水野と近藤が座っていたのはなんと平成中村座名物の…。最後は橋之助の長兵衛と彌十郎の水野が緊迫した立廻りを見せ、熱気が失せる間もなく、初日の幕を下ろしました。
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今回の平成中村座では十八世勘三郎を偲んで、18個の“隠れ勘三郎”が場内にちりばめられており、土産物店も並んでいます。芝居見物の楽しみが存分に堪能できる「平成中村座 陽春大歌舞伎」は5月3日(日・祝)までの公演。
チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹にて販売。劇場窓口では各公演の開演1時間前から当日券も販売されます。先着順でお一人様1枚、お支払いは現金のみとなります。なお、公演中の21日(火)17:00には 「平成中村座 試演会」も予定されています。