玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

『二人藤娘』坂東玉三郎


 

 

 1月17日(土)より、全国公開(東劇では先行上映中)されるシネマ歌舞伎第21弾『二人藤娘/日本振袖始』について、収録舞台の出演者でシネマ歌舞伎の編集・監修を行った坂東玉三郎が、作品への思いなどを語りました。

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

 シネマ歌舞伎第1弾の公開は2005年1月でした。10周年の記念すべき年に公開となる『二人藤娘/日本振袖始』は、玉三郎の11本目のシネマ歌舞伎出演作。最初の出演作『鷺娘/日高川入相花王』以来、玉三郎は「撮ったものをどうしたら、舞台を観てくださった方にも観やすいか、観ている感覚を損なわないか」に心を砕いて編集も手がけ、音へのこだわりもみせてきました。

 最新作『二人藤娘/日本振袖始』ではついに、特別映像として玉三郎による作品解説と、舞台裏の映像、そして2作品の舞台がなんの違和感もなくつながり、一つの映像作品となってスクリーンに登場します。「今までよりもカメラを増やし、お客様が観て違和感のないようにつなぐ。お客様の気持ちに即したカットづくり、あるいは観てもらいたいところを強調するカットに…」、撮影した映像から丹念にカットを探す作業が続いたと言います。

 
玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

 『二人藤娘』左より、坂東玉三郎、中村七之助

 

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

 『二人藤娘』中村七之助

『二人藤娘』
 「問題は最初の暗転のところをどうするか。詞章を字幕で出してみたりもしたのですが、解説部分用にと撮っていた舞台裏の映像をつないでいたら、出待ちで“若紫に~”と長唄が始まって出るか出ないかわからないうちに、パッと舞台に変わるということに」。真っ暗な映画館で真っ暗な画像のままお客様をお待たせすることはできない、その解決策がまったく新しいシネマ歌舞伎ならではの演出となりました。

  「役者ってこうやって引込んでいくんだな、こんなときに相談しているんだな、と舞台裏を見る楽しみを」と、玉三郎。藤音頭で出ていくとき、七之助と言葉を交わしているシーンについては、「微妙なタイミングについて話しているんです」と教えてくれました。「私たちは子どもの頃から舞台に出ているので、切替えが早いのです」と言う、舞台上と舞台裏の違いについても、「面白いでしょう? 七之助さんとの関係も見えたのではないでしょうか」とにっこり。

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

『日本振袖始』中村勘九郎

 「同じ女方なので評価は厳しくなりますが、それでも七之助さんはよくやっています。先代(十八世勘三郎)、先々代(十七世勘三郎)は情緒的な方でしたが、技術もあり、努力もして修業しなければ、あんなふうにはできません。それを七之助さんは次男坊として客観的に見てきたのでは」と、共演者について語った玉三郎。「いいお手本があると抜け出しにくい。勘九郎さんはどう受け継がないで自分を出していくか、ですね」と、『日本振袖始』の共演者についても話しました。

『日本振袖始』
 「映像になって正面から見て、よさが発見できました。今までにない迫力のある素盞嗚尊(スサノオノミコト)です。勘九郎さんは一所懸命で、熱演なのにもかかわらず、抑制が効いています」と、シネマ歌舞伎の編集を手がけたからこそ、気づいたこともあったようです。

 「女方は後シテができるようでなくてはいけない、と言われています。後シテはシネマ歌舞伎では『蜘蛛の拍子舞』(2010年公開)以来ではないでしょうか」と言い、「舞台の自分は全然、満足できていません。残念ながら」と、相変わらず自身に向ける目はこの上ない厳しさです。しかし、「映画としてはわりとよくできたのではと思います」と、謙遜しながらも自信のほどをのぞかせました。

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』

 『日本振袖始』右より、坂東玉三郎、中村勘九郎

 玉三郎の「シネマ歌舞伎のための撮影ができるようになった」という言葉に集約されるように、舞台でもない、単なる記録映像でもない、「二次元で観て楽しめる」メディアとしてのシネマ歌舞伎。「絵が動くからMOVIE(ムービー)。そして、持って動ける、遠くに行けるからMOVIE」。普段、歌舞伎がご覧になりにくい人にも、歌舞伎のほうから近づいていけるシネマ歌舞伎は、そういう意味でまさしく “MOVIE”だと、玉三郎は語りました。


 シネマ歌舞伎第21弾 『二人藤娘/日本振袖始』は、1月17日(土)より全国公開。なお、すでに3日(土)より、東京 東劇にて先行公開中です。


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2015/01/14