「市川猿之助奮闘連続公演」開幕
10月3日(金)、新橋演舞場 「十月花形歌舞伎」が初日を迎え、市川猿之助奮闘連続公演がスタートを切りました。
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2カ月連続で猿之助が昼夜に渡り奮闘を見せる公演が、新橋演舞場の初日『俊寛』で開幕。右近が俊寛僧都で鬼界ヶ島に現れると待ちわびたかのようにお客様の拍手が起こりました。次の、三代猿之助四十八撰の内『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』の清姫でいよいよ猿之助が登場、場が変わると忠文になり、ともに頼光と七綾姫に「この恨み晴らさでおくべきか」と言い残して息絶えます。やがて二つの霊が合体、宙乗りでおどろおどろしく宙空を飛びました。
次の幕は「双面道成寺」。白拍子姿で三井寺にやってきた猿之助、狂言師に変わって三つ面踊りを見せたあと、清姫忠文の怨霊となり、頼光と七綾姫に襲い掛かります。衣裳のぶっ返りや鱗四天との大立廻りでたっぷり見せ、最後は押戻しによって清姫忠文の怨霊は鐘の上へと消え去ります。これまでの古典歌舞伎とは異なるスポットライトや照明効果で、『金幣猿島郡』が装いも新たに蘇りました。
夜の部は三代猿之助四十八撰の内『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』。花道から登場して「市川猿之助でございます」とご挨拶すると大きな拍手。舞台に錦之助、春猿と並んだ猿之助は、一人18役、40数回の早替りで休憩を含めて5時間余り、「座中一同、表方、裏方、獅子奮迅の活躍をいたしましてご覧にいれまする。スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)から参加してくださいました、原田保さんの新しい照明とともに、懐かしくて新しい、“なつかあたらしい芝居”を上演する次第にございます」と口上ご挨拶。
七里渡しの海中では“アクアマリン”の世界で海中を自在に泳ぎ回り、岡崎ではサーチライトに照らされての猫の怪の宙乗り、そして箱根山中の大滝では本水の滝に打たれながら見事に敵を倒した猿之助。ノンストップの活躍で着いたところが小田原で、ここから品川までの間に12役20回の早替りを見せます。そしてついに、京の三條大橋から始まり53の宿場を描いた道中双六も日本橋で上がり。「まず今日はこれ切り」の切口上にお客様の大拍手で、初日の幕が降りました。
猿之助のコメント
本日、無事に初日を迎えることができました。右近さんの『俊寛』で幕を開け、続く『金幣猿島郡』は伯父(猿翁)が手掛けたものの中でも不動の人気狂言です。子どもの頃、男女の霊が合体するなんてすごい発想だなと思いました。博多座で1回上演しましたが(平成22年2月)、今まで一緒にやってきたスタッフと共に、新たに照明の原田保さんに参加していただき、現代のスピード感、感覚に合ったものができ上がりました。
また、夜の『獨道中五十三驛』は伯父が復活させた初演(昭和56年7月歌舞伎座)の形に戻し、18役早替りに挑戦します。化け猫の宙乗り、海底での立廻り、箱根の場では本水を使いますし、こちらも(照明の)原田さんに手掛けてもらいましたので、また新しいものになっていると思います。ぜひご期待ください。
単に伯父の真似をするのではなく、三代目猿之助の精神を受け継ぎつつ、多分に猿之助となった私の色を狂言で表現していくこと、それこそが真の継承だと考えています。
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新橋演舞場 「十月花形歌舞伎」は、27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹にて販売中です。