海老蔵が語る「九月花形歌舞伎」
9月2日(火)から始まる、京都四條南座「九月花形歌舞伎」に出演する市川海老蔵が、公演への意気込みを語りました。
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通し狂言『壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)は、今年1月、新橋演舞場で初演された作品です。悪七兵衛景清を軸に歌舞伎十八番の4演目(『関羽』『鎌髭』『景清』『解脱』)を新たな構想で描き、通し狂言としてのスケールの大きさ、景清が見せる豪快な荒事、さらには、舞台上で観劇する「三升席」の設置、津軽三味線との初コラボレーションなどさまざまな話題を集め、この秋、早くも再演の運びとなりました。
初演から1年も経っていませんが、今回の再演では「変わるところもあり、変わらないところもあります。見取り狂言と違い、通し狂言ではやり切ってしまわないことが大事。歌舞伎の場合、やりたいことをすべてやってしまうと難しいものになってしまうので、できるだけそれを避け、見やすくなるようにすることが大切だと思っています」と、さらなる意欲を見せました。
景清の思いを荒事に表現する
軸となる景清は、「歌舞伎十八番には数多く上演されている演目もありますが、この4演目は百数十年ぶりの上演だったりするものもあり、実は、先祖にも景清を演じている方があまりいません」。そんななかで景清を演じるにあたっては、「景清の果たせなかった夢物語を、どう表現して荒事につなげるかにこだわりました」。
景清の果たせなかった思い
「景清も本当は正義になりたかったのだと思います。だから、牢破りの場では隈取の青黛(せいたい)を消し、正義を意味する赤い隈で登場するのでは」と海老蔵は言います。そして、勝者よりも敗者に心を寄せる日本人なのに、源平の戦に敗れた景清にあまり光が当たっていないのは、「そこに陰、心の闇があるのでは」と見ています。
斬新なことをするのが團十郎家
三升席については、「父(十二世團十郎)が『成田山分身不動(なりたさんふんじんふどう)』を復活上演したときのことを憶えていて(平成4年8月歌舞伎座自主公演)、いつかやってみたいと思っていました」。景清が“解脱”に至る場にお客様がいらっしゃることで、「観ているお客様にとっても面白いし、目先が変わったことで出家、悟りといった“解脱”の深い意味がより強調されると思います」。
また、津軽三味線プレイヤーの上妻宏光氏が歌舞伎の舞台に登場する演出は、「景清を見ていても舞台に奏者がいれば、三味線に目が行くことがあってもよいのではないでしょうか。才能のある方にはどんどん世に出ていただきたいと強く思います」と言葉に力を込めました。表立つことの少ない日本文化ももっと大切にしていきたいという気持ちは、近年のさまざまなジャンルとの交流にも表れています。「二世團十郎も『助六』に河東節をとり入れました。斬新なことをする精神も大事にしていきたいと思っています」。
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京都四條南座「九月花形歌舞伎」通し狂言『壽三升景清』は、9月2日(火)~26日(金)の公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹にて販売中です。