染五郎『カブキ国への誘い』への思い
8月15(金)から3日間にわたり、渋谷区文化総合センター大和田で開催される「渋谷金王丸伝説 ―スペシャル版 冒険の章― 『カブキ国への誘い』」に出演する市川染五郎が、公演にかける思いを語りました。
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熱い熱いイベントにしたい
平成22年、渋谷区文化総合センター大和田の伝承ホールの柿葺落公演として上演された「渋谷金王丸伝説」、今回は4回目の公演です。「日本中の人が知っている“渋谷”の元になった人物というのが面白い」。染五郎にとっての「渋谷」は東横ホールをはじめとする歌舞伎と縁の深い街。その名の始まりである渋谷金王丸が、江戸の人々に愛されてさまざまな伝説が生まれたことに染五郎が興味をもち、金王丸を「力強い勇者」として具現化しました。
今回は染五郎演じる金王丸たちが、歌舞伎を知らない人が抱く歌舞伎のイメージ、たとえば、女方の歩き方や見得、立廻りなどを題材に、歌舞伎の「技」を身につけて次のステージに進みながらゴールに行きつくという展開です。クドキやだんまり、ぶっかえりなど、歌舞伎の要素が満載です。
金王丸の仲間として、子ども向け番組で人気のキャラクター、ガチャピン・ムックが登場しますが、子ども向きの公演にするつもりはないと染五郎は断言。「これは、たくさん踊って体を動かす、そのパワーを感じていただく“創作舞踊劇”です。歌舞伎という題材を使い、どれだけ出演者一同が楽しめるか、そのパワーをお見せすることこそが、子どもたちに響くと思います」。三番叟で厳かに幕を開けたあとはゴールに至るまで、いろいろな種類の踊りが次々と繰り出されます。
ガチャピン・ムックとの初共演
「出演者のなかで一番有名な人たちなので、いいところで登場して引っ込む、大御所的な出演です(笑)」と、初共演のガチャピン・ムックを紹介した染五郎。これまで数多くの冒険をしてきたガチャピン・ムックですが、歌舞伎は今回が初挑戦。染五郎は、「俳優祭」(平成26年3月歌舞伎座)でくまモンに殺陣をつけた経験が活かせると、振付に自信をのぞかせました。
歌舞伎界からは市川猿弥が、敵役のオロチ丸で出演。「猿弥さんはあらゆるものを持っている役者さん。見たこともないほど、とてつもなく速く踊るところを入れ込みたい。思いっきり踊ってもらおうと思います」。ダンサーが多数登場し、最後には、客席も一緒に「カブキぼん!ダンス」を踊ります。
音楽は現代邦楽で、歌舞伎でお馴染みの黒御簾音楽や長唄が、パーカッションやドラムなどで洋楽的にアレンジされた曲も入る予定。「カブキぼん!ダンス」は楽曲をすでに配信中です。
歌舞伎との距離を縮めてほしい
これまでも、大阪松竹座や京都四條南座で「傾奇おどり」として創作舞踊を披露してきた染五郎。「リズムに合わせて体を動かす、それが踊りの原点。それを100分やれば一つの作品になるのではとつくったものです」。また、土地に根ざした歌舞伎踊りでは、長野県茅野市の「茅野カブかん囃子」、島根県出雲市では「出雲神あそび」なども創作しています。
歌舞伎を題材とした作品をつくり続けるのは、「歌舞伎に接してほしい、歌舞伎を遊びにしてほしい、そして歌舞伎を観に来てほしい」という染五郎の熱い思いがあるからです。創作舞踊劇は「歌舞伎への橋渡しの一つ」――。熱いイベントが夏をいっそう熱く盛り上げます。