仁左衛門、孝太郎、千之助が《月イチ歌舞伎》初日舞台挨拶に登場
6月28日(土)、MOVIX京都と東京の東劇にて «月イチ歌舞伎»『女殺油地獄』の初日舞台挨拶が行われ、片岡仁左衛門、片岡孝太郎、片岡千之助が登場しました。
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MOVIX京都で「お帰りなさい!」の声と温かい拍手に迎えられたのは仁左衛門。本作に収められているのは、孝太郎のお吉、孫の千之助のお光で、仁左衛門が与兵衛を勤めた舞台(平成21年6月歌舞伎座)です。「いい思い出です。生の与兵衛を千之助に見せたかったんです。客席で見せるのと実際に舞台で見せるのは違いますから。きっと大きくなったらわかってくれると思います」。
与兵衛は「20歳の頃、初めて主役をさせていただいた、大事にしている役」ですが、本作に収められているのは、一世一代として勤めたものです。「芸ではなく、生の若さで見せることで、より深くお客様に理解していただけるのが、この『女殺油地獄』だと思っています。一世一代は寂しいけれどほっとするところもあり、やり残したところもある…」と、複雑な胸中を明かしました。
近松の考えた与兵衛と自分の考えている与兵衛とは違い、「人間の性、若者の思い」に重きを置いて与兵衛を自分に引き寄せ、“仁左衛門の『女殺油地獄』”をつくり上げてきました。「油屋での殺しの場では、遮二無二になってからいったん落着き、次第に殺しを楽しみだす。残虐な殺しをしておいて、後から怖さが襲ってくる。義父に金を無心するところも、ついには逆上して暴力をふるう。回を重ねて演じるうち、そういうところもだんだん変わってきました」と言います。
「与兵衛は見栄っ張りで面子ばかりで、弱い人にほど威張る。親にもガンガンたてつくけれど、どこか可愛がって欲しいところもある。どんな善人にも悪の部分があり、もちろん私にもあります。だから、芝居にできる、舞台に出せるんです」と言う仁左衛門が目指すのは、「もう、しゃあない子やなと、思ってもらえる」与兵衛。そんな上方歌舞伎ならではの人物、与兵衛が、この1週間は全国のスクリーンに現れます。
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一方、東京では孝太郎と千之助が親子そろって登場。孝太郎の後ろから少し照れながら千之助が現れると、こちらも満場の拍手で迎えられました。
孝太郎はお吉の思い出として、松竹座公演(平成19年7月)でお吉を勤めたとき、急遽、代役で父、仁左衛門が与兵衛を演じたときの話を披露。「父は親であり師匠でもあり、勉強のために見る映像の中の人。最初の茶屋の場面で“与兵衛さん、お参りかい”と言ったとき、現実なのか夢なのか、すごく不思議な感覚でした」。
そして、シネマ歌舞伎に残る公演で再びの共演がかないました。「おかちだろうと思っていたら、まさかのお吉。毎日、幸せでした。しかも親子3人で出られて」と笑顔になると、千之助も大きくうなずきました。千之助はかわいいお光役ですが、衣裳の着方、髪をとかす仕草、歩き方など、「丁寧にやらないといけない。女方は本当に大変です」と、父に尊敬のまなざしを向けました。
仁左衛門が20歳で与兵衛を初演して評判となったことから、「19歳で与兵衛をやるって言ってたよね」と孝太郎に向けられた千之助は、少しはにかみながら、「その年が近づいてくると、やってみたい、よりも本当にできるのかなという気持ちが強くなって。だから、20歳で頑張りたい」と少し軌道修正。「そのときは、父と僕は(与兵衛の親の)徳兵衛とおさわだそうで、棒でたたきのめすんだと言っていました」と孝太郎が明かし、場内は温かい笑いに包まれました。
千之助はシネマ歌舞伎の『春興鏡獅子』にも胡蝶で出演しています。「自分の映像を見るのは恥ずかしくて、ここにいたくないくらいですが(笑)、中村屋のおじ様(十八世中村勘三郎)の最後の『鏡獅子』に出られて、それが残っているのはうれしいです。『鏡獅子』もやりたいし、新しい歌舞伎座で『連獅子』もやりたいので、シネマ歌舞伎を観ます」と話し、夢の舞台に期待を込めた大きな拍手を浴びていました。
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