吉右衛門、又五郎、歌昇が語る「松竹大歌舞伎」東コース
6月30日(月)から始まる平成26年度(公社)全国公立文化施設協会主催「松竹大歌舞伎」東コースは、三代目中村又五郎、四代目中村歌昇襲名披露として行われます。出演の中村吉右衛門、中村又五郎、中村歌昇が、公演への意気込みを語りました。
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吉右衛門と歌昇がぶつかり合う『角力場』
幕開きは『双蝶々曲輪日記』「角力場」で、吉右衛門の濡髪長五郎とがっぷり四つに組む放駒長吉、挑戦するのは歌昇です。「若い人はびっくりするほどのきらめきを放つときがある。舞台はキャッチボールと同じですから、濡髪の私と放駒の歌昇君が球を投げ合い、歌昇君が変化球を投げたときに私がどう受け止め返すか...」と話した吉右衛門。
吉右衛門はこの芝居を、「濡髪という大人の世界を知っている相撲取りと、放駒長吉という純真な心を持った若者とのぶつかり合い」と言います。濡髪にぶつかっていく長吉の姿は、大先輩の吉右衛門に立ち向かう若い歌昇の姿にも重なります。歌昇は「立ち向かうことがいい意味で芝居に出ればと思います。全力で、純真な心でぶつかりたい」と意欲を見せました。
歌昇にとっては、「父が襲名披露公演で演じていた姿を見てやりたいと思っていた」大役。しかも吉右衛門の濡髪を相手にとあって「こんな幸せなことはない。夢のよう」と喜びの笑顔を見せつつ、一所懸命稽古を重ねると気を引き締めました。吉右衛門からは「襲名以来ずいぶん成長したので、私はできると信じています」とエールが送られました。
2度目の又平に挑む又五郎
又五郎の『傾城反魂香』浮世又平は、平成10(1998)年7月国立劇場以来となります。「吉右衛門兄さんに手取り足取り教えていただきましたが、毎日必死で、精一杯でした。今回、もう一度それを洗い直し、初めて演じる心持ちで勤めます」と語り、「舞台を一所懸命、努力精進して勤めさせていただくに尽きます」と、舞台に取り組む真摯な姿勢を見せました。
芝居の終盤、又平は姫の救出に向かう出立の前に、ひとさしの舞を見せます。吉右衛門は、又五郎さんは踊りの上手な方ですがと前置きして、この舞は「踊りの上手な人は踊ってはいけない、芝居で見せないといけない」という二世尾上松緑の言葉を紹介。又五郎が今度の舞台でどのような舞を見せるか、大きな楽しみとなりました。「又平の心の葛藤を観ていただきたい。最後はお客様にすっきりとした気持ちでお帰りいただける芝居です」と、又五郎も芝居の魅力をアピールしました。
襲名披露を全国各地で
平成23年9月に始まった又五郎、歌昇の襲名披露公演もこれで見納めとなります。「二人とも活躍して皆様に認めてもらえるようになり、播磨屋一門としてうれしい」と喜ぶ吉右衛門は、「襲名はそのあとが大変」と、二人のこれからに期待を寄せました。
「すべての舞台が印象に残っています」と足かけ4年の襲名披露興行を振り返った又五郎は、新橋演舞場を皮切りに全国各地で襲名披露ができたことに深く感謝しました。歌昇は、「これで最後と思うと寂しい。上達したかどうかはわかりませんが、毎日いろいろなことを教えていただいた幸せな襲名披露でした。少しでも結果を出せるようにすること、それしかご恩返しはできないので、今回もしっかり稽古して準備します」と誓いました。
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真夏に各地を回る公演となりますが、吉右衛門は「土地の方たちと舞台と客席で交流ができるので、私はとても好きです。体調に気をつけ、興行を無事に終えることが一つの務め」と公演にかける思いを語りました。「松竹大歌舞伎」東コースは、6月30日(月)江戸川区総合文化センターから7月31日(木)厚木市文化会館まで、全44公演。チケットは、チケットはチケットWeb松竹ほか、各会場にて販売中です。