勘九郎、七之助、松也が「コクーン歌舞伎」への意気込みを語る

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 6月6日(金)から始まる、渋谷・コクーン歌舞伎第十四弾『三人吉三』に出演する中村勘九郎、中村七之助、尾上松也が、公演にかける思いを語りました。

中村勘九郎

いつかはと願っていた『三人吉三』
 「月も朧に白魚の...」の名せりふで知られる『三人吉三』。平成13(2001)年、コクーン歌舞伎は第4弾にして初めて黙阿弥に挑戦、大胆な演出が作品に新たな魅力をもたらしました。当時、勘太郎だった勘九郎は2度目のコクーン歌舞伎参加でおとせを勤め、初参加の七之助は十三郎。再演された平成19(2007)年には、逆の配役で参加しています。2人とも、「いつかは自分が吉三を」と食い入るように稽古を見ていたと言います。

 一方、再演を客席から見ながら、「いつか勘九郎さん、七之助さんでの上演となったときに、自分が3人目の吉三として食い込まないといけない」とひそかに心に決めていた松也。3人が抱き続けてきた熱い気持ちが勘九郎の和尚吉三、七之助のお嬢吉三、そして松也のお坊吉三という形で実現する舞台が、いよいよやって来ます。

中村七之助

新しさをねらうのではなく
 「演出の串田さんによると、今回はあえて歌舞伎の音は使わないそうです。見たことのない大川端になります」との勘九郎の言葉に象徴されるように、これまで2度の上演とはまったく異なる作品になるだろうと、3人は口を揃えました。「より、今の時代に生きている歌舞伎にしていきたい。黙阿弥が現代で『三人吉三』を書き上げて初演したらどうなるか。やらせていただくからには面白いものにしたい」と、勘九郎は意気込みを見せました。

 「父たちは決して新しいことをやろうとしたのではありません。こうしたら面白い、と思いやっていった結果、新しいと言われてきた。でも、コクーン歌舞伎としては、それもでき上がった古典になりつつあります」。前2回のイメージが強く残るなか、演者が変わっただけになることを危惧する七之助は、「"混ぜるな危険"じゃないですけど、皆が合わさってたとえ毒薬になってもいいから、やれることをやる」と、力強く語りました。

尾上松也

 『夏祭浪花鑑』(平成23年3月博多座)で串田演出を経験した松也も、「チーム全員でどういう『三人吉三』にするのか、大変な作業になります。特に、七五調で表される黙阿弥らしさと、斬新な音楽とのバランスを探るのが大変でしょう」と覚悟を決めており、「歌舞伎やこれまでのコクーン歌舞伎を意識せず、僕たちができることをやり、お客様に楽しんでいただければ」と意欲的に話しました。

自分たちがつくり上げる『三人吉三』
 コクーン歌舞伎初演の稽古場は、見ていた2人が「初日の幕は開かないと思った」ほど緊迫していたと言います。そして初日の朝の稽古で、「まるで芝居の中の吉三が乗り移ったかのような3人」(七之助)が生み出した圧倒的なラストシーン。過剰なほどに降り積もる雪の中、激しい立廻りで壮絶な死を迎える3人の吉三は、「もう"飛んじゃって"ますよね。わけがわからなくなって自由になるんですね」。そう話したのは、『天日坊』(平成24年6月)クライマックスの大立廻りが記憶に新しい勘九郎でした。

 出演者の半分以上が歌舞伎以外の俳優で、下座音楽も使わない、現代に生きている歌舞伎とはいったい...? 「この物語の肝は『伝吉内』『お竹蔵』の場にあると思っています」と言うのは七之助。3人の親子兄弟関係、親の因果と子の運命が明るみになる場です。「そんな親でもやっぱり好き。『三人吉三』は子の親への思いの物語なのでは」と勘九郎。そして、「若い僕たちでやると、そういう面がよけいに出てくると思います」と続け、今回の挑戦にあたって一つのヒントを見出したようでした。

 これからの稽古でいったいどんな舞台が誕生するのか、期待がふくらむコクーン歌舞伎『三人吉三』。チケットの販売は、4月20日(日)より、チケットWeb松竹チケットホン松竹Bunkamuraチケットセンター、オンラインチケット My Bunkamuraで販売予定です。

2014/04/03