玉三郎がグランドシネマ『日本橋』を語る

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 3月21日(金・祝)に全国公開、前日の20日(木)にはTOHOシネマズ日本橋のオープニング上映作品の一つとして、先行上映されるグランドシネマ 坂東玉三郎『日本橋』。全国公開を前に玉三郎が作品への思いを語りました。

 2012年12月に日生劇場で上演された『日本橋』は、25年ぶりにお孝を演じた玉三郎が演出にも携わり、その新演出の舞台は大きな話題となりました。今回の映像化にあたっても、玉三郎が自ら映像と音響の編集を行い、「お客様に映像として楽しんでいただける『日本橋』」を生み出しました。

 
グランドシネマ坂東玉三郎『日本橋』

音への徹底的なこだわり
 本作は、公演中の休演日を利用し、「夜の部公演だけの日の昼間に、芝居の前半のお孝を撮り、後半の体が衰えてからのお孝は、昼の部公演のあとに撮る」という方法で撮影されました。「せりふが主体となる芝居では、雑音や劇場の空調の音を取り除き、せりふをきれいにするだけで2カ月、3カ月。仕上げには普通の映画と同じくらい時間がかかりました」。お客様の入っていない劇場で撮影をしてもなお、玉三郎が納得する音響制作にはそれだけの時間が必要でした。

 「せりふの声質も本番の舞台とは全然違います。役者ってやっぱりお客様が入っていると声が張っているんです」。今回のような撮影方法では、劇場よりも「写実にしゃべれる」そうです。また、「たとえば、舞台の橋を渡る音と、シネマ用に整えた後の橋を渡る音ではぜんぜん違います。できればきれいにしたい、けれど、できるだけそうした音は前面には出ないようにしました」。芝居を引っ張るせりふだけでなく、気がつかないような背景の音にまで神経をいきわたらせていることが伝わってきます。

見て欲しいところを見ていただく
 映像もしかり。絵コンテに従って撮るのではなく、「6台のカメラが入って、引き、抜き、ゆるめのアップ、グッと寄ったアップなど、監督の十河壯吉さんがお撮りになったものを私が編集しました。大事なところにカメラが寄っていくけれど、芝居の前半から寄っていくと、ここぞというところで寄りの効果が薄れます。2時間半の全体のなかでの編集を考えないといけません」。

 編集では一つのシーンに対し、固定の画像、ズームで寄っていく映像...、複数の映像からどれにするかを選び、どこでその映像を切るか決めていきます。「カメラがピント合わせのためにズッ、ズッ、と寄った映像をわざと使ったりもしています。そのほうがいいと思う映像を使います。だから、本当はカメラ10台入れたい!」。作業量が膨大になるにもかかわらず、作品のためによりよい映像、よりふさわしい効果を求める姿がそこにあります。

舞台と映像のはざまで
 つくりものの舞台とリアルな映像、「その線引きをどこにするかが難しい。一石橋の場で紙の雪が降るのは、本当の映像を求めるならダメです。でも、舞台では芝居とせりふでそれを見せる」。なんでも映像用に変えるくらいなら「映画を撮ったほうがよほど早い(笑)」なか、ロケ撮影とセット撮影、リアルな映画とイメージで見せる芝居、その難しい線引きをするのも、やはり玉三郎自身です。

 グランドシネマ『日本橋』は、三次元の舞台ともリアルな映画とも一線を画し、まさに、玉三郎の視線で観る、新たな『日本橋』といえるでしょう。ぜひ、お近くの映画館でご覧ください。


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3月20日(木)~先行上映TOHOシネマズ日本橋

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2014/03/19