『陰陽師』が大谷竹次郎賞受賞
1月27日(月)、新作歌舞伎の優れた脚本に贈られる大谷竹次郎賞の授賞式が行われ、『新作 陰陽師 滝夜叉姫』の脚本を手がけた今井豊茂氏が受賞、出演の市川染五郎がお祝いに駆けつけました。
▼
昭和47(1972)年に制定された大谷竹次郎賞(松竹株式会社・公益財団法人松竹大谷図書館共催)は、「歌舞伎俳優によって上演された新作の歌舞伎、歌舞伎舞踊の脚本を対象とし、娯楽性に富んだ優れた歌舞伎脚本」に贈られる賞です。1月から12月までに上演された新作の脚本を7人の選考委員が審査、松竹株式会社創業者の一人、大谷竹次郎の誕生日である12月13日に結果が発表されています。
第42回平成25年度の受賞作は、昨年9月歌舞伎座で上演された 『新作 陰陽師 滝夜叉姫』に決定。本賞の授賞は6年ぶり、20作目となります。歌舞伎座新開場後、初の新作歌舞伎として注目を浴びた本作は、夢枕獏原作の人気小説を題材に、多くの若手花形俳優が出演する歌舞伎作品としてつくり上げられました。
式の初めに、選考委員を代表して水落潔氏から、「今回の脚本は、原作が歌舞伎の素材となりやすい怪奇小説でしたが、主人公が傍観者であることで舞台化は難しいと思われました。しかし、荒事や変身など歌舞伎の技法をふまえた脚色、出演者7人それぞれを活かした職人的技術、その他いろいろな試みで夢枕獏の世界を見事に立ち上げており、全員一致で賞に選出しました」と選評が発表されました。
賞状と賞金、松竹大谷図書館賞として副賞の記念レリーフが贈呈された今井氏は、「皆さんのおかげで受賞の栄誉を得ました。『陰陽師』を歌舞伎にと言われたとき、小説や漫画でイメージができ上がっていたので、どうしようかと思い、とにかく"歌舞伎狂言にしよう"と決めました。河竹黙阿弥の"座元に親切、役者に親切、お客様に親切"、この三親切を心がけ、一つでも多くそのような作品を上演できるようにします」と、感謝のご挨拶を行いました。
染五郎は、「私も受賞を喜んでいるひとりです。歌舞伎座新開場記念のプレッシャーはとても大きく、また、我々の年代がこれほど多く揃って新作に関わるのはまれで、大変なことです。ただの顔合わせではなく、ドラマとしてつくり上げること、今井さんがこれを大きな柱としたことで、スケールの大きな芝居になったと思っています」と、製作時の苦労に思いを馳せながら祝辞を述べました。
今井氏には夢枕氏から祝福の花束が届き、出席者からは新開場にふさわしい作品、これからの歌舞伎を支えていく俳優たちががっぷり四つに組んで見ごたえがあったなどの賛辞とともに、今後への期待も寄せられました。それに対し、染五郎から「今までにない驚くような作品、あたかもずっと前からあったかのような作品...、さまざまな新作にこれからも関わらせていただきたい」と力強い言葉が述べられ、式が終了しました。