玉三郎が天岩戸神社で『アマテラス』を語る
6月5日(水)、博多座9月公演『アマテラス』に出演する坂東玉三郎ほか出演者らが、作品の題材にもなった日本神話のご当地、宮崎県高千穂町の天岩戸神社を訪れました。
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『アマテラス』は平成18(2006)年の初演時、演出も勤める玉三郎の舞と、太鼓芸能集団「鼓童」の魂を揺さぶるような演奏が、大好評を博した壮大な音楽舞踊劇です。歌舞伎座以来、6年ぶりの再演となる今回は、アメノウズメ役として、元宝塚の男役スターの愛音羽麗が特別出演、パワーアップした舞台が期待されます。
出演者らに河野俊嗣宮崎県知事、内倉信吾高千穂町長も加わった一行は、まず天岩戸神社に成功を祈願、続いて佐藤延生宮司の案内で天岩戸を見学しました。さらに、天安河原にも参拝したのち、高千穂町の民俗芸能の神楽「ウズメ」「タヂカラオ」を鑑賞しました。
日本神話が生まれた場所に立って
昨年5月から鼓童の芸術監督を務める玉三郎は、初めて訪れた高千穂で天岩戸や神楽を見たことで、アマテラスの実感がわいてきたと言い、高千穂への道中も、「山々や景色が神々しく、ここを通ってくる中で神話が集約されたんだな」と感じていたそうです。
「岩戸、天安河原には、日々の生活から編み出したお話や神、また、神を祀ったり豊作や無事を祈ったりする中で、神楽ができたことを感じました。昔はほとんど農家の方がなさっていたという神楽はつくづく、人々の祈りの中から生まれた芸能だと感じました」。
鼓童は、博多での長期公演は初めてとなりますが、代表の見留知弘は、岩戸開きという芸能の始まりの場所に立った喜びとともに、以前も鳥肌が立つくらい感じることがあったと言う天安河原で「またものすごい力をいただいた」と話しました。現地の空気を感じて取材することが一番身になると言い、それをもとにつくり出したものを日本の芸能として世界に発信していくと、あらためて今後の活動への決意も述べました。
初参加となる愛音は、宝塚在籍中にも出演した博多座に再び立つうれしさと、これまで舞台で日本物を演じる際の手本としてきた玉三郎との共演に、驚きと喜びを感じていることを話しました。高千穂では「アメノウズメの魂のようなものが降りてきたような印象」をもったとのこと。また、神楽を見て「面をつけているのに、すごく表情があり、心が伝わってくる...。自分の踊りでも表現できたら」と思い、この地に来て感じとった「空気や水、緑の深さなどを舞台で表現したい」との意欲を語りました。
新しい『アマテラス』へ
「一幕の始まりの部分は、初演時に神話ということで重々しい演出をしてみたのですが、今回は心地よくすっきりと始まるようにと考えております。また、岩戸開きのウズメの舞は新曲もつくり、愛音さんに充分に踊っていただきます。扉を開けて見たくなるような踊り、ですね。そのウズメに合わせ、アマテラスもスサノオも新たにしつらえをしたいと思います」。
今回の演出プランをそう話した玉三郎は、自身が演じる役については、「アマテラスという存在は、絶対的な光の神なのでしょうが、表現はとても難しい。象徴としての抽象的な存在」と言い、「怒りやこの世の中に対する違和感をもって天岩戸に隠れたものを、どうやって呼び戻すのかという話なので、神々が扉を開けるまでが山場で、開いてしまったら再会を喜んで踊るという演出にしています」と語りました。
7月東京に続く、9月5日(木)からの博多座公演。チケットは7月20日(土)から、博多座ほかで発売されます。また、10月5日(土)からは京都四條南座での公演もあります。