6月29日スタート、梅玉が語る「シネマ歌舞伎クラシック」
6月29日(土)~7月19日(金)、東京 東劇にて開催される「シネマ歌舞伎クラシック」で上映される舞台の出演者の一人として、中村梅玉が取材会見を行いました。
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俳優にとっても貴重な機会
「役者の芸は一代限り、舞台も芸も消えてしまうものと、父(六世歌右衛門)は言っていました。人間国宝がズラリと並ぶ今回の上映は、いわば国の宝の復活。お客様はもちろんのこと、後輩俳優が勉強し直すにも、とてもいい機会です」。歌舞伎の将来を気にかけ、「ちゃんと伝えておくれよ」と言っていた歌右衛門の気持ちをしっかり受止めている梅玉は、「シネマ歌舞伎」が、歌舞伎の普及に大きく貢献していると切り出しました。
今回の上映作品は、30年ほど前の舞台映像です。当時、「舞台に立つだけで芸になっていた」先輩たちを、今の自分が見てどう感じるか、そしてその芸の神髄を探りたいと梅玉は言います。「歌舞伎はお客様が変われば、役者も変わり、歌舞伎の雰囲気が違ってくる」、変わるからこそ歌舞伎は不滅であり、決して遺産ではないと断言しました。
六世歌右衛門と七世梅幸
今回の上映作品について、『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』は、「脂の乗り切った、父が一番いいときの舞台。見ないと怒られるので(笑)、飽きるくらい毎日見た父の八重垣姫です」。その舞台で立役の梅玉の心をつかんだのが、七世梅幸の勝頼でした。「こういう役ができる役者になりたいと思っていました」。歌右衛門と梅幸という「互いが互いを認め合っているトップの芸術家同士の、心の交流が感じられて今も忘れられない」舞台だそうです。
『隅田川』の斑女の前も歌右衛門の当り役の一つ。海外公演で歌舞伎として受け入れられるか、歌右衛門は心配していたそうですが、ふたを開けてみれば絶賛の嵐、世界各地で演じました。しかし、梅玉には心残りもあります。「中村屋(十七世勘三郎)の舟人が素晴らしいんです。いつか父を相手に舟人をやりたいとずっと思っていたのですが、初めて勤めたときは、父に"役を甘く見ている"と叱られました。父が生きている間に中村屋のようにはできませんでしたね」と、振り返りました。
梅玉が昨年5月の平成中村座で挑んだ『髪結新三』の手代忠七。初役のこのときは、今回の上映でも十七世勘三郎の新三を相手に演じている「梅幸さんの忠七を思い出しながら、勤めさせていただきました」。梅幸に限らず、今回登場する名優たちと一緒の舞台を勤めたことで、「おじさんだったらどうするだろう」と考えられることが、今の自分の財産になっていると、梅玉は語りました。
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上記の3作品に加え、歌舞伎座閉場中に亡くなった、富十郎、芝翫、雀右衛門の舞台も上映されます。『二人椀久』はこの舞台の後、フランス公演で絶賛を浴びた雀右衛門と富十郎、極付けの舞台です。芝翫の『年増』は、怪我をした歌右衛門の代役として踊ったのが高く評価され、以来、再演を重ねて数ある当り役の一つとなりました。
今回は東劇での期間限定上映。ぜひ、貴重な映像体験をお楽しみください。上映時間ほか詳細は「シネマ歌舞伎クラシック」のサイトをご覧ください。