菊之助が挑む『籠釣瓶花街酔醒』の八ツ橋
12月1日(土)に初日を迎える新橋演舞場「十二月大歌舞伎」『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』で、女方の大役の一つ、八ツ橋に初役で挑む尾上菊之助が、その意気込みを語りました。
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豪華な衣裳に負けない中身を
八ツ橋といえば、吉原仲之町見染の場に登場する豪華な衣裳と鬘のこしらえが印象的です。「『助六』の揚巻に匹敵するくらい重量があります。鬘(かつら)は鹿の子がかかった分、揚巻の兵庫の鬘より重いのではないでしょうか。豪華なこしらえでは、中身が埋まっていないと衣裳に負けてしまうところがあるので...」と、初役挑戦へ気合が入ります。
「八ツ橋の魅力はやはり美しさではないでしょうか。絢爛豪華に飾ってはいるけれど、それだけでなく、揺れ動く女性の心を内包しつつ美しくなければいけないと思います。また、廓の掟のなかで生きていく女性の強さも、"及ばぬ身分でござんすが、仲之町を張るこの八ツ橋"のせりふに集約されていると思いますが、結局は廓という籠の鳥である儚さも魅力の一つだと思います」。
ひと色ではない八ツ橋
華やかだけれど闇もある吉原で、前半のみどころの一つとなる見染の場は「一陣の風が流れる瞬間であればいい」と言います。また、最後に籠釣瓶で斬られる場面は「一つの命が終わるカタルシス。型として築き上げてくださった先輩方に感謝するとともに、型だけにならないよう、本当に腑に落としてやらないといけません」と、気を引き締めます。
もう一つのクライマックスとなる縁切りの場。自分では選択の余地のない身受け話の場で、間夫(まぶ)に言われて縁切りをしなければならないという、「のっぴきならない状況で、揺れ動く感情を大事に演じなければと思っています」。そこには「浮き川竹の流れの身」という役の性根がありますが、「女方の大役を勤めさせていただいて思うのは、大役であればあるほど、その性根はひと色ではないということです」。揺れ動く心が八ツ橋を様々な色に見せていきます。
いよいよ初役披露
いつかは挑戦したいと思っていた八ツ橋役。「次郎左衛門に対する感情は、決めつけないほうがいいのでは、と考えています。八ツ橋は、何度か手がけていくうちには、その日その日で決まっていくような、自由度のある役だと思います」。揺れ動く心、複雑な感情の動きは、稽古をしていてもまだわからないところがあるとも言います。「舞台に上がるまでには決めなくてはいけませんね」。その舞台がいよいよ幕を開けます。
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新橋演舞場「十二月大歌舞伎」は1日(土)初日、25(火)千穐楽。チケットはチケットWeb松竹、チケットホン松竹にて販売中です。