海老蔵が語る「新春浅草歌舞伎」
2013年1月2日(水)、東京 浅草公会堂で幕を開ける「新春浅草歌舞伎」。第1部、第2部にわたり全演目に出演する市川海老蔵が、公演への意気込みを語りました。
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正月の浅草歌舞伎への出演は、新之助を名のっていた平成11(1999)年以来となる海老蔵。浅草歌舞伎については、「まだ演じたことのない大役をやらせていただく公演というイメージがあります。幡随院長兵衛もここでなら演じさせていただける。とてもありがたいことです」と、14年ぶりの出演に新たな意義を感じているようでした。
■若手と一緒の舞台で初役に挑戦
――『寿曽我対面』工藤祐経
「"貫目(重み)"で見せる役。十三代目の仁左衛門のおじさんが素敵で、すごかった」と言う『寿曽我対面』の工藤は初役です。共演は若手花形たち。浅草歌舞伎が「フレッシュなものをお客様が楽しむお祭りであり、(出演者が)自分のすべてを出し切る場であってほしい」と願い、共演する若手が今後の浅草歌舞伎を担っていく存在になればと語りました。
■“男”を出す――幡随院長兵衛
「背負うものがあり、因果、寂しさ、哀愁があり...。近年の男にはない"男"ですよ」と海老蔵が言うのは幡随院長兵衛。父、團十郎から習うべき役の一つではあるものの、「40代、50代でやる役というイメージがありました。しかしその年代で初役で勤めても、そう簡単にはいきません。ならば、今回はチャンスです」と意気込みます。
「舞台上にいるだけで幡随院にならないといけないと思うんです。若いうちに逃げないで、恥をかいてでもやっておけば、いつかは成田屋=幡随院となるのでは。浅草は古典を勉強するいい機会です。気合を入れ、失敗しないように頑張ります」。
■念願の共演――『勧進帳』弁慶
「ずいぶん前から、愛之助さんとやりたいと言っていた」のが『勧進帳』。念願がかなうこの弁慶役は、初演が平成11年1月の浅草歌舞伎でした。精神的にもきつかったという当時を思い出しつつ、「まさか浅草でまたやらせてもらえるとは思いませんでした。これも巡り合せです。弁慶を一から考え直し、もう一度、構築し直そうと思っています」とのこと。
9月公演「古典への誘い」で、能楽の演者、演奏者たちと共演し、七世團十郎が能の『安宅』から歌舞伎の『勧進帳』をつくるにあたっての情熱、能楽への憧れなどをあらためて感じたと言う海老蔵。今回は、「もう一度、父の思っていることを聞きたい。20歳そこそこで弁慶を父に習いましたが、同じ役でも、年齢を重ねた今では、僕の受け止め方が変わってくるのではないか。それが非常に重要なことです」と述べました。
■出演し続けることで見えてくるもの
第2部「寿初春口上」は「『勧進帳』の仕初め式のようなもの。今後のお稽古次第ですが、三が日は"にらみ"も考えています」。そして、『毛谷村』の杣斧右衛門(そまおのえもん)も勤めるため、海老蔵は全演目に出演となります。
今年1月の大阪松竹座公演で全演目に出演した折、「続けてすべての演目に出演することによって身につき、日頃では考えないことが思い浮かぶことがあるんです。それは役を深化させる次へのステップ」と思ったそうです。浅草歌舞伎も「『勧進帳』で締めくくれるということで、何か見つかるんじゃないか。そして、それを壊して次に...」と、自らに期待をかけていました。
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浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」のチケットは11月24日(土)より、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売です。