右近、笑也が語る「松竹大歌舞伎 西コース」
8月31日から全国21都市を巡る「(社)全国公立文化施設協会主催 西コース 松竹大歌舞伎」が始まります。演目は『歌舞伎のみかた』、『熊谷陣屋』、『女伊達』。公演に先立ち市川右近、市川笑也が意気込みを語りました。
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市川右近
熊谷次郎直実の大役を勤めさせていただきます。多くの名優の方々が懸命に演じてこられた古典の代表作である『熊谷陣屋』を私ども猿翁一門の若手で演じさせていただくことに大変な喜びを感じており、また巡業で各地へ赴くことができるのも大変嬉しく思っております。『熊谷陣屋』は1999年に私の自主公演「市川右近の会」で上演させていただきました。師匠の猿翁とは違う自分なりのカラーが何かを模索していた頃で、師匠から「辛抱の立役は良いかも知れないね」と言っていただき、自分なりのカラーというものが徐々にだせるようになった思い出のある作品です。
師匠の型では、最後に熊谷と相模の夫婦が連れ立って、一緒に花道を引っ込みます。こうすることで夫婦の愛がさらに際立ち、終わり方もとてもドラマチックなになるのではないでしょうか。このお芝居は夫婦の愛、主従の愛、親子の愛など、様々な愛が交錯していて、普遍的に現代にも通じるものだと思います。また、そうした愛の物語として描くことで、さらに現代の息吹を作品に吹き込めるのではないかと感じています。義太夫の三味線の糸に乗りながら、皆様にワクワクドキドキ喜んでもらえるような舞台にしたいと思っています。
市川笑也
今回の巡業では『熊谷陣屋』の藤の方と女伊達を勤めさせていただきます。魂を込めたお芝居を皆様にお見せして、納得していただけるよう一所懸命頑張りたいと思っています。師匠の猿翁からは常々「とにかくあなたは数をやりなさい」と言われております。古典というものに対して、まだ身体と気持ちのバランスが整ってないと感じることもあるので、巡業で古典の舞台を勤めさせていただけるのは大変良い機会です。大先輩方の素晴らしい舞台を思い浮かべながら、それに近づけるよう努力したいと思います。