春猿、笑三郎、猿弥が十月花形新派公演『滝の白糸』での意気込みを語りました

春猿、笑三郎、猿弥 十月花形新派公演『滝の白糸』での意気込みを語りました。

▲ 前列右から市川春猿、井上恭太 後列右から市川笑三郎、市川猿弥、瀬戸摩純、川上彌生

 10月7日~26日、三越劇場にて、澤瀉屋一門をゲストに迎え、劇団新派の若手を中心に、花形新派公演『滝の白糸』が上演されます。

 『滝の白糸』は新派が115年に亘って繰り返し上演してきた指折りの人気作ですが、東京では10年ぶりとなります。水芸のシーンなど見どころも多い話題の舞台。公演を前に、市川春猿、井上恭太、瀬戸摩純、川上彌生、市川笑三郎、市川猿弥が舞台での意気込みを語りました。

市川春猿
 今回初めて新派公演に参加させていただきますが、昔から新派の作品が大好きで、このような機会に恵まれた事を大変嬉しく思っております。17歳で師匠市川猿之助に入門いたしましたが、入門当時の"初心"に立ち返えり、新たな気持ちでこの新派公演に参加させていただきたいと思っています。

 多くの先輩方の素晴らしい『滝の白糸』の舞台を拝見して参りました。白糸を勤めるのは初めてですし、新派に出演させていただくのも初めての事ですが、自分なりに変えてしまうような事はせず、先人がやられてきたことにできる限り沿った形で勤めたいと思っています。新派には新派の形、演じ方というものがあると思います。そして、お客様も新派を観に来ていらっしゃるのですから、新派の俳優の方々、スタッフの方々にいろいろと伺いながら、新派の『滝の白糸』を皆様にお見せできるようにしたいと思っています。

 井上恭太さんと私の歳の差とちょうど同じくらい、白糸は欣弥よりも歳が上になります。歳の離れ方も同じですし、普段から恭太さんは真っ直ぐでいらっしゃって、私は結構チャキチャキしていて(笑)そういうところも、同じようですので、舞台がさらに楽しいものになるのではないかと思っています。


井上恭太
 『滝の白糸』で村越欣弥を勤めさせていただくことに、今とても身の引き締まる思いでいます。今回の役は自分にとってターニングポイントになるのではないかと感じていますし、欣弥をしっかりと勤めることができれば、今までの役者人生でお世話になった方々へ恩返しができるのではないかと思っています。さらに今回の公演には、春猿さん、猿弥さん、笑三郎さんという澤瀉屋の皆様が出演して下さり、大変心強く思っております。

 春猿さんとは、すでにお稽古で何度かご一緒させていただいておりますが、その魅力にどんどんと引き込まれています。きっと花形新派公演らしく、若々しく、そして力強い『滝の白糸』になるのではないかと今から楽しみにしています。


瀬戸摩純
 桔梗を勤めさせていただきます。諸先輩方が繰り返し勤めてきた大きなお役ですので、新派の舞台に恥じないように、そして舞台に華を添えることができるように、しっかり勤めたいと思っています。この舞台の見どころの一つ、水芸も披露いたしますが、以前の舞台では水が出なくなってしまったり、逆に顔に向かって掛ってきたり(笑)いろいろなアクシデントを経験した事を思い出します。

 澤瀉屋の皆様は明るくて、ご一緒のときはいつも楽しく過ごさせていただいています。また、新派では喜多村緑郎先生や花柳章太郎先生が白糸をなさったこともありますが、今回は春猿さんや、笑三郎さんという歌舞伎の女方さんとの共演になります。いままでとはまた違った華やかさが舞台に出るのではないかと、とても楽しみにしています。


川上彌生
 2008年8月、花形新派公演『紙屋治兵衛』では片岡愛之助さんとご一緒させていただきましたが、今回は春猿さん、猿弥さん、笑三郎さんとの共演に参加させていただくことができ、大変光栄に思っております。撫子を勤めさせていただきますが、こうして大きなお役をいただいたことに感謝の気持ちを持ち、ご来場いただいたお客様に「ああ、もう一度観てみたい」と思っていただけるような公演にできたらと思っております。

 『滝の白糸』は、私が新派に入った翌年の巡業で出演させていただいた思い出深い演目です。以来何度か出演させていただいておりますが、茶店の場に出たり、傍聴人で出たり、巡礼で出たりと、実はとても出番が多く、舞台裏での忙しさが印象に残っています。


市川笑三郎
 新派の公演に初めて参加させていただきます。新派というお芝居は、歌舞伎(旧派)に対して新しい演劇をということで始まったのだというお話を、昨年他界いたしました私の師匠藤間紫よりよく聞いておりました。今回『滝の白糸』に出演させていただくことで、師匠が言っていた言葉がどういうものだったのか体験し、勉強する機会を与えていただけますことを大変ありがたい事だと思っております。

 『滝の白糸』は、数多い新派の作品の中でも、とくに有名な狂言の一つです。時代背景はもちろん、裁判所で話が終わるところなど、やはり歌舞伎と作風が違うということを感じています。新派ならではの独特な雰囲気、そこにどのように自分がいられるのか・・・まだ想像がつきませんが、一所懸命勤めたいと思っています。

 私は女方として新派に出演いたします。花柳章太郎先生が、そして英太郎さんがご活躍している世界に踏み込むという新しい体験が今からとても楽しみです。私が舞台にいることが新派の世界の中で突飛にならないように心がけ、ぜひ歌舞伎ファンの方にも観ていただき、応援していただけたらと願っています。


市川猿弥
 南京寅吉を勤めさせていただきます。新派の舞台に出演させていただくのは初めてですが、劇団の方々とは以前『西太后』や『狸御殿』で共演させていただいており、「初めまして」という感じではなく、既に和気あいあいとさせていただいております。

 歌舞伎と全く違うところは、舞台に女性が出演することでしょうか。さらに今回は女方さんもいらっしゃるので一味違った面白さもあります。僕の中での新派は、歌舞伎でいう世話物にリアリティを加えたような感覚です。歌舞伎ほどは決まり事のない世界の中で、自分でも動きを決めながら、出演者・スタッフの方々と一つになって、良いものを創っていきたいと思っています。

 お客様から「良いお芝居でしたね」といっていただけるような舞台にしたいと思っています。これをきっかけに新派が益々皆様に愛されるようになればと願っています。新派には『明治一代女』や『滝の白糸』といった有名な作品の他に、なかなか上演されない名作もあると思います。今後そうした作品を僕たちで復活するようなことが出来るようになれば、さらに面白いものになるのではないでしょうか。

2010/09/15