海老蔵 8月新橋演舞場「八月花形歌舞伎」への想い
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ロンドン公演、ローマ公演で忠信を演じてみて、真剣に物事に打ち込んでいけばお客様に通じるという事を実感し、さらに古典を掘り下げること、新しい考えを持つこと、それらを懸命に努力するということがこれからも必要だと感じました。
そして、日本人は凄く優秀だということも感じました。日本人は繊細で努力に対して非常に純粋です。ですから日本の文化を海外で喜んでいただける、ということにもっと自信を持っていいのではないかと思います。"日本が本来持っているものはこんなに素晴らしい""本当に価値のあるものであるならば行くべきだ"海外公演に関しての考え方も変わりました。
今回、新橋演舞場の凱旋公演では、ロンドン、ローマで上演させていただいたように、「鳥居前」と「道行」を合わせ、その後にいつも通りの「四の切」という、できるだけロンドン、ローマと同じ形で上演するように致します。これほど歌舞伎の醍醐味を表現できる狂言は少ないと思っていますし、相当悩んで創り上げた舞台ですので、ぜひ楽しんで頂きたいと思っています。
ロンドンの方は、様々な国の演劇に慣れていらっしゃるので、いろんな文化の見方というのが本能的にわかっていらっしゃるようです。また、サドラーズ・ウェルズ劇場は先輩方や僕自身も一度舞台に立っていたので、比較的やりやすさを感じました。ローマは2日間の公演でしたが、イタリアで歌舞伎は比較的評判が良いようですので、いつかイタリア巡業などをしてみたいと夢に思います。
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『京鹿子娘道成寺』では福助兄さんの白拍子花子で、押戻しを勤めさせていただきます。舞台に出る時間は短いのですが、大館左馬五郎は本当に体力がいります。『道成寺』で積み重ねてきたものを、押し戻さなくてはいけないという、大変なお役です。しっかり勤めたいと思っています。
『東海道四谷怪談』では伊右衛門を初役で勤めます。父・團十郎に教わりますが、存在感や男の色気が必要な、非常に難しい様々な要素の詰まった役だと感じています。初役ですので、なるべく父に習ったように折り目正しく丁寧にやりたいと思っています。勘太郎さんをはじめ初役の方が多いので、お客様に楽しんで頂けるように皆で努力できるかという所も一つの見どころではないでしょうか。