歌舞伎美人サロン<一、鼓>
3月22日に「第2回歌舞伎美人サロン」が開催されました。今回のゲストは歌舞伎囃子方・田中流家元の田中傳左衛門さん。歌舞伎公演での演奏はもとより、歌舞伎の新作や舞踊の作調などでもご活躍され、また「三響會」を主宰するなど、伝統芸能の新しい可能性を見出す活動も積極的に行われています。田中傳左衛門さんによる楽しいお話を数回に分け、歌舞伎美人ニュースでご紹介してまいります。
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初めまして、田中傳左衛門です。演奏を終えて今歌舞伎座を出て来たばかりなので、まだ落ち着いていませんが・・・(笑)。
まずは、楽器の説明から始めましょう。囃子方の鳴物には、小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)、締太鼓(しめだいこ)、楽太鼓(がくたいこ)、大太鼓(おおだいこ)など様々な種類があります。これは、小鼓の胴で(下写真)、私がほとんど毎月の舞台で使用しているものです。材質は桜で、1550年ごろ桃山時代の作のものと言われています。年輪を見ますと、この桜の樹齢は2300年程だといわれていますので、随分古いものです。
その上に蒔絵が施されています。装飾的な意味ももちろんありますが、これは日本の四季の変化、暑さや寒さや湿度で木が狂わないように、漆で止めているという効果もあります。
こちらは革です。馬の革を使っています。例外はありますが、バチで叩く楽器の革は牛で、手で叩くものは馬と言われています。馬の革は牛に比べて繊維が3倍程あり非常に耐久性に優れているので、薄くても張りのある音が出ます。
舞台で叩いているのを見て、さぞ厚い革と思っている方もいらっしゃるようですが、打つ方の面で約0.3mm。裏は約0.2~0.22mmのものを、調べという紐で締め付けて組みます。革はとても薄いものなので、バランス良く丁寧に締め付けていかないと直ぐに破れてしまいます。
演奏中、鼓をなめているんですか?という質問を良くいただきます。先ほどご説明したとおり、革はとても薄いので、表面に0.01~0.02mm程の調子紙という和紙を貼り、その紙に湿度を与えて革の厚さや重さ、湿度などのバランスを保つようにしています。
舞台の上などに置いておくと、すぐに狂いが生じてしまうので、それを調整するため、絶えず息をかけたり、なめたり、そういった作業を繰り返す必要があるんです。
多くの方が勘違いなさっていることなので、ぜひ今日、これだけは覚えて帰っていただきたいと思います。鼓は、左の手で持ち、右の肩において、右手で打ちます。雑誌やテレビなどでも、逆になさっている方を見受けることもあり、是を機会に、鼓の正しい持ち方を、ぜひ日本全国に広めていただければと思っています(笑)。