時蔵、亀治郎、海老蔵 新橋演舞場「新秋九月大歌舞伎」への思い
9月新橋演舞場は「新秋九月大歌舞伎」。昼の部では『源平布引滝』『枕獅子』、夜の部では『加賀見山旧錦絵』『色彩間苅豆 かさね』と楽しみな演目が続きます。上演に先立ち、中村時蔵、市川亀治郎、市川海老蔵が舞台への思いを語りました。
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中村時蔵―――
『加賀見山旧錦絵』では中老尾上を勤めます。平成5年国立小劇場で初めて本格的な“片はずし”を勤めさせていただいた作品です。この時は、成駒屋のおじさん(六代目歌右衛門)が監修してくださいまして、厳しく教えていただいた、思い出深い役の一つです。15年たって新たに勤めるわけですから、女方として成長の証しを見せる場でもあると思って、気を引き締めて勤めるつもりです。
昼の部の『枕獅子』は、明治になってできた『鏡獅子』の元となった長唄の古い曲で、それを成駒屋のおじさまが藤間宗家の振付けで復活なさった作品です。『鏡獅子』では御殿女中ですから品を求められます。ところがこちらは傾城ですから、相手に思いを伝えたり、恥ずかしがったり、『鏡獅子』に比べてお芝居がしやすいという特徴があり、とても良い踊りだと思っています。
市川亀治郎―――
『加賀見山旧錦絵』のお初は平成16年3月、国立劇場での上演以来、4年ぶりになります。国立劇場の時には、岩藤は翫雀さん、尾上は扇雀さんで関西型での上演でした。今回は関東型になります。お初は忠義一途な女性、初役のつもりで勤めたいと思っております。
『かさね』は平成18年のこんぴら歌舞伎、ロンドン・アムステルダム公演、そして今回で3度目になります。ロンドンでは、ローレンス・オリビエ賞にもノミネートされた演目ですが、意識せず平常心を心がけて臨みたいと思っています。
市川海老蔵―――
『源平布引滝』の「実盛物語」は5年ぶり、助六と並ぶほど多く勤めさせていただいている演目です。今回「義賢最期」、そして舞台では昭和6年以来の上演となる「竹生島遊覧」を合わせて上演することは、自分の中でかなりの冒険です。丁寧に描くことで、源氏にとっての白旗、平家にとっての赤旗がどれだけ大事な物かという事を伝えたいと思っています。
『加賀見山旧錦絵』では岩藤を初役で勤めます。歌舞伎には絶対悪という役柄がありますが、岩藤はそういう役ではなく、むしろ正論を言っていて人間らしい所もあります。『かさね』の与右衛門も根っからの悪ではないと思いますが、好感度とういう物は捨てて勤めないといけませんね(笑)。
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公演は9月1日(月)より25日(木)まで。公演情報はこちらをご覧ください。