藤十郎、團十郎 江戸・東京で初共演
歌舞伎座百二十年を記念する「 三月大歌舞伎」。昼の部の『陣門・組打』、夜の部『京鹿子娘道成寺』では、江戸の元禄期以来、上方で活躍した坂田藤十郎と、江戸で活躍した市川團十郎の二つの大名跡が歌舞伎の歴史上初めて、江戸・東京の歌舞伎座で共演することとなりました。また、藤十郎は、喜寿記念として道成寺を勤めることも話題になっています。
公演に先立ち、坂田藤十郎と市川團十郎が揃って記者懇親会を行いました。
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坂田藤十郎―――
上方歌舞伎の創始者である、坂田藤十郎の名前に憧れ、一昨年、231年ぶりに襲名させていただきました。身に余る事、今後とも一生懸命勤めなければいけないと思い続けております。
そうした気持ちでいる中、歌舞伎座120年というすばらしい年に、成田屋さん、江戸歌舞伎をお作りになった市川團十郎さんと、私が憧れておりました坂田藤十郎という名前で、江戸・東京でご一緒できる事を本当にありがたく思っております。
荒事の江戸歌舞伎と和事の上方歌舞伎、この両方が隆盛にならないと、本当の意味で歌舞伎が発展しているとは言えないと思っております。今後とも上方歌舞伎のために、一生懸命勤めたいと思っております。
市川團十郎―――
初代市川團十郎が1660年に生まれて以来、この江戸の地・東京で、坂田藤十郎という名跡と市川團十郎という名跡が初めて一つの舞台に立ち、荒事・和事の二つが正面から四つに組んだ芝居をさせていただけるという事は、私にとりまして身に余る光栄、そして大変身の引き締まる思いがいたします。
今回の興行は、歴史の重みを感じながらの舞台になると思います。昼の部『一谷嫩軍記』では、九代目團十郎も勤めたように、腹芸と申しましょうか、身体を動かさずに、我が子を手にかけなければいけない心情を出す役柄でございます。また、夜の部の『京鹿子娘道成寺』は藤十郎さんの喜寿記念、そのお祝いの道成寺で押戻しを勤めさせていただきます。どちらも精一杯勤めたいと思っております。
初代、江戸・東京への思い―――
藤十郎―――
初代團十郎と初代藤十郎については、多くの逸話が残っておりますが、舞台はご一緒していなかったようで、今回の共演をとても喜んでくれているのではないかと思っております。
去年、大阪松竹座でご一緒させていただきました時も、東西の歌舞伎を作った先祖の名前で舞台を勤めるという幸福を熱く感じました。総ざらいの時から気持ちが高揚しまして、早く江戸・東京でも、と思った気持ちが忘れられません。その時の気持ちを持って勤めたいと思っています。
團十郎―――
初代團十郎は荒事の創始者ですが、それを演じながら、和事への憧れをお持ちだったと思っています。一月に勤めさせていただいた『助六由縁江戸桜』でも、助六は最後に紙衣(かみこ)姿になります。紙衣を着たいという和事への憧れが市川家の初代・二代目にはあったのではないでしょうか。今回は和事についても一から勉強させていただきたいと思っています。
昨年1月、大阪松竹座の『勧進帳』で共演させていただきましたが、浪花の地は市川家にとってみるとアウェイなんです(笑)。ですから、どういう事になるかと思っておりましたところ、とても温かく迎えて下さって・・・実は公演のあとにお食事に誘っていただいたり、奥様からも丁重なお手紙をいただいたりと、藤十郎さんご夫妻には、今も大変感謝しております。
今度は逆転いたしまして、藤十郎さんが江戸に来て下さるという事ですから、市川家として精一杯のおもてなしができればと思っておりますし、そいうい関係が大事なのではないのかなと思っております。
喜寿記念『京鹿子娘道成寺』への思い―――
藤十郎―――
今回、『京鹿子娘道成寺』の上演が決まり、サブタイトルに“喜寿記念”はどうでしょう?ときかれた時、「どなたが喜寿になられるんですか?」と聞いてしまいました(笑)。私自身、喜寿という事を忘れておりました(笑)。そして、今回成田屋さんが、押戻しに出てくださいます。本当に嬉しく思います。
團十郎―――
本当にすごいなとつくづく思います。藤十郎さんはバイタリティーと力強さを内に秘めていらっしゃるので、“押戻し”が逆に押し戻されないように、こちらも十代の気持ちでがんばらなくちゃいけないと思っております(笑)。
藤十郎―――
「藤十郎が喜寿、僕もがんばらなくてはいけない。」と言って下さるお客様が随分多いそうです。そういった意味で、世の男性に鋭気をつけたのですから、このタイトルは非常によいのではないかなと思っています(笑)。
そういう歳になっても、これくらいの芸しかできない・・・そう思われないようにがんばりたい。ですから一挙手一投足、手を抜かずに一生懸命、生まれ変わった気持ちで勤めたい、そういう気持ちで一杯でございます。
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上方和事の坂田藤十郎と江戸荒事の市川團十郎、二つの大名跡が江戸・東京で初めての共演。歴史的瞬間を、ぜひ歌舞伎座の舞台でお楽しみください。